肉豚の出荷減により、豚肉価格が上昇(マレーシア)


豚総飼養頭数は94年をピークに減少

 マレーシアの養豚は、マレー半島に位置する西マレーシア地域に集中しており、
1,909戸(97年、以下同様)の養豚農家が244万頭の豚を飼養し、一戸当たりの平
均飼養頭数は約1,280頭(日本は98年 2 月 1 日現在739頭)となっている。養豚
の規模拡大はかなり進んでいるものの、飼養頭数は94年をピークに減少している。
主産地は、中央部では首都クアラルンプール近郊のスランゴール州とその南に位
置するヌグリ・スンビラン州、北部ではタイと隣接するペラ州、南部ではシンガ
ポールと隣接するジョホール州となっている。これらの4州で、西マレーシアの
飼養頭数の約 8 割を占めている。


豚肉供給が減少、消費者の豚肉離れを懸念

 マレーシアの 1 日当たり平均の豚肉需要量は、成体豚で約 1 万頭と見込まれ
ている。しかし、今年の 3 〜 4 月頃からマーケットに出荷される成体豚の頭数
は、主産地のスランゴール州、ヌグリ・スンビラン州およびペラ州の養豚農家を
中心に減少し始め、1日の需要量に対して約 1千頭が不足しているとされる。ま
た、成体豚の出荷体重は、通常が100〜120kg程度であるのに対し、80〜90kg程度
と小型になってきているため、需要量に対する不足はさらに大きくなっている。

 このため、 1 kg当たりの農家販売価格は約 6 割上昇して4.5リンギット(162
円:1リンギット=約36円)となった。この状況が続くと、豚肉の小売価格に大
きく影響することから、消費者の豚肉離れによる需要の減退が懸念されている。


自然災害、通貨危機などのほか環境対策による廃業も出荷減の要因

 この出荷頭数減少の直接的な要因としては、@水不足、天候不順、昨年の煙害
の後遺症などが原因とみられる豚のへい死および子取り用めす豚の繁殖障害が増
加したこと、A昨年からの通貨危機の影響で生産コストの上昇などにより、経営
が困難となった多くの中小養豚農家が廃業したこと、B生産頭数が減少している
にもかかわらず、シンガポールへ輸出を希望する養豚農家に輸出許可を与えたこ
と、C環境対策に伴う養豚農家移転問題で、州政府が指定する養豚団地の土地を
購入できずにやむなく養豚を廃業する農家が増加していることなどが挙げられて
いる。また、間接的な要因としては、2000年から適用を受ける水質汚濁防止に関
する環境規制を満たすことが難しい養豚農家が、心理的に生産意欲を欠いている
ことも挙げられる。

 なお、この出荷頭数の減少は、少なくとも半年先まで続くとみられており、同
価格は、今後、さらに上昇することが懸念されている。


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