連邦控訴裁判所、MMO制度は合法との逆転判決(米国)


昨年11月の連邦地方裁判所の判断を覆す

 ミズーリ州セントルイスの連邦第 8 巡回控訴裁判所は、 8 月13日、昨年11月
の連邦地方裁判所の判断を覆し、連邦ミルク・マーケティング・オーダー(MMO)
制度のクラスT上乗せ価格の積算根拠は合法であるとの判決を下した。

 これは、90年にミネソタ州の酪農家グループが、米農務長官を相手取り、MMO
制度の最低保証飲用乳価プレミアム(BFPへの上乗せ額)が、加工原料乳生産地帯
であるミネソタ、ウィスコンシン州を中心とする上部中西部(Upper Midwest)の
乳価を引き下げているとして訴訟を起こしていたもので、昨年11月、ミネソタ州
ミネアポリスの連邦地方裁判所は、上乗せ価格の算定の方法は、不公正であると
の判決を下していた。このため、この判決を不服とする米農務省(USDA)が控訴
していた。


MMO制度は合法であるが不完全

 MMO制度は、指定オーダー地域内で取引される飲用規格(グレードA)生乳につ
いての用途別最低取引価格を設定するとともに、オーダー内の生産者に対してプ
ール乳価による支払いを義務付けている。また、グレードAのうち、クラスT
(飲用乳向け)の最低乳価については、BFP*(基礎公式価格)にオーダーごとに
定められる上乗せ価格を加えて算出するものとされている。現在、この上乗せ価
格は、ウィスコンシン州オークレア市からの輸送コストおよび加工規格(グレー
ドB)生乳を飲用規格に転換するための追加費用等を考慮して定められている。
このため、同地域からの距離に比例して、上乗せ価格が高くなる仕組みとなって
いる。

 控訴裁判所は、現行制度が不完全であると認めたものの、価格決定に係る規則
は、農務長官の裁量下にあり、制度を強制的に変更させるほどの欠陥は見当たら
なかったとしている。また、飲用乳価設定方法に係る政策決定は、議会とUSDAが
行うべきものであって、裁判所の役割ではないとしている。

*MMO制度の用途別最低取引価格の算定基礎となる価格。

 伝統的な加工原料乳生産地域であるミネソタ、ウィスコンシン両州の加工原料
規格(グレードB)生乳の価格に、バター、脱脂粉乳およびチーズの価格動向を
加味して調整の上、算定される。


注目される今後のMMO制度の改革論議に及ぼす影響

 USDAは、今後、MMO制度の改革に向けて全力で取り組むことができるとして、こ
の決定を歓迎している。一方、ミネソタ生乳生産者協会は、この判決について遺
憾の意を表明するとともに、今後、上訴することについて検討していくとしてい
る。

 また、全国生乳生産者連盟(NMPF)は、今回の判決後、クラスTの最低乳価の
特定問題から離れ、全体の枠組みの観点からMMO制度の改正についての議論を行う
よう希望すると発表した。

 ところで、USDAは、MMO制度の改正案を今年1月末に発表しているが、その中で、
クラスT価格の新しい算定方式として、現行踏襲型のオプション 1 aおよび市場
連動型のオプション1bの2つの案を提示している。USDAは、オプション1bを採
用したい意向を示しているものの、生産者団体や議会がおおむねオプション1a
を支持している現状にあり、現行制度を合法とした今回の決定が、今後の改革論
議にどのような影響を及ぼすかが注目される。


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