食品の安全性確保体制に関する報告書を公表(米国)


多くの課題に直面する食品の安全性確保体制

 全米科学アカデミー(NAS)は、 8 月20日、「生産から消費までの安全な食品
の確保」と題する調査報告書を公表した。これは、議会からの指令に基づき、連
邦および州の食品の安全性確保に関する法律やプログラムを調査したもので、13
人の科学者からなる委員により取りまとめられたものである。

 同報告書によれば、食品の安全性確保体制は、新たに出現する病原とそれを同
定する能力、急増する輸入食品に対する適切な検査体制の維持、さらには食品サ
ービス業や増加する大規模食品加工場に対する適切な検査体制の維持など、多く
の課題に直面しているとしている。


食品安全性確保プログラムの管理体制の統一化などを勧告

 このような食品の安全性をめぐる情勢と調査結果を踏まえ、同報告書は、次の
ような改善策を勧告した。

 第1に、食品の安全性確保にかかわる人材などが限られているため、食品の安
全性確保システムは、科学的根拠に基づくものを優先させ、できる限り予防に心
がけること。その一例として、食肉・家きん肉の検査に関して、視覚による検査
のような時代遅れの規則は、科学に基づく検査への改革・実施のための人材を転
用することは、むしろ安全性確保体制を弱めるものであり、今後見直しの必要が
あると指摘している。

 第2に、現在、連邦政府段階では、12の機関が食品の安全性確保にかかわって
いるため、しばしば機関相互の調整がうまくいかなかったり、それぞれの政策、
規則、実施方法などが一貫していないことなどがある。このため、食品安全性確
保プログラムの管理体制を統一化し、複数の連邦政府機関にまたがる食品安全関
連部局を統率する単一の責任者を設けること。

 問題のある具体例として、食肉の入っていないピザの配達業者は食品医薬品局
(FDA)の規制を受けるが、食肉入りのピザの場合は農務省(USDA)の規制を受け
ることを挙げている。また、州や地方機関の活動との協調もうまく取れておらず、
食中毒の発生を事前に防止するのではなく、発生後の対処に振り回されているの
が実態であるとしている。

 第3に、現在35ある食品の安全性確保に関する法律を、より効率的に消費者を
保護するための近代的な全国的食品安全性確保プログラムにするため、これらを
改正・統合すること。


米大統領、「食品安全性に関する大統領協議会」を設置

 NASの報告を受けて、クリントン大統領は、同政権内に「食品安全性に関する大
統領協議会」を設置した。同協議会は、グリックマン農務長官、シャララ保健・
社会福祉省長官およびレーン・ホワイトハウス科学技術政策室長が共同で会長を
務め、政府機関をまたがる事項の調整に当たることとなる。


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