EUの牛肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○98年の牛肉等の域外輸出量は前年の4分の3以下に急減


98年牛肉等輸出量、前年比26.8%減

 イギリス食肉家畜委員会(MLC)によると、98年のEU15ヵ国から域外への牛肉
等(生体牛および調製品を含む)の輸出量(枝肉換算ベース)は、76万9千トン
(前年比26.8%減)と前年の4分の3以下に大きく落ち込んだ。牛肉等の輸出は域
内の牛肉生産量の減少などを背景として、91年の132万5千トン(EU12ヵ国)をピ
ークに減少を続けているが、98年の減少率は91年以降最大となっている。

 輸出された牛肉等の内訳を見ると、冷凍牛肉は前年比33.1%減の54万4千トンと
大幅に減少したものの、牛肉等全体の輸出量に占める割合は70.1%と依然高い割
合を占めている。これとは対照的に冷蔵牛肉は、前年比4.4%増の9万8千トンとな
った。また、生体牛、調製品は、それぞれ同7.3%減、17.5%減といずれも減少し
ている。

◇図:EU15ヵ国の牛肉等域外輸出量◇


ロシア向けは前年の3分の2に減少

 輸出量全体に占める割合を輸出先地域別に見ると、中東欧・ロシアが46.8%と
約半数を占めており、次いでアフリカ29.3%、中東・アジア22.5%となっている。
なお、中東・アジア向けのうちの9割程度が中東向けとみられ、EUから地理的に
近い地域のシェアが高くなっている一方で、牛肉生産が盛んな北米、南米、オセ
アニアやEUから地理的に離れているアジアへの輸出はごくわずかとなっている傾
向に変化はない。

 ロシアは95年以降、EU産牛肉にとって最大の市場となっているが、98年8月の
通貨ルーブル切り下げなどの影響で、ロシア向けは前年比39.1%減の26万トンと
冷蔵牛肉を中心に前年の3分の2に急減した。これが、98年にEUの牛肉等輸出が大
幅に減少した最大の要因である。また、ロシアに次ぐ第2の市場であるエジプト
向けなど他の主要輸出先向けについても、いずれも前年を下回った。

◇図:EU15ヵ国の牛肉等の輸出先別域外輸出量◇


アイルランドは唯一輸出増加

 国別の輸出量を見ると、各国とも輸出量が減少している中で、アイルランドだ
けが唯一増加している。アイルランドの98年の牛肉等域外輸出量は、前年比7.3
%増の26万7千トンとなり、ドイツを抜きEU最大の牛肉輸出国に返り咲いた。ア
イルランドは国内消費の約10倍に当たる生産量を誇り、牛肉は同国の主力輸出品
の1つとなっている。生体牛輸出については、96年以降、牛海綿状脳症(BSE)の
影響で北アフリカ市場を豪州に奪われ減少し、完全に回復していないが、冷蔵・
冷凍牛肉については、良質な草資源をベースとした低コスト生産による価格競争
力を武器に輸出を年々拡大させている。

EUの牛肉等の国別域外輸出量
be-eu07.gif (3015 バイト)
 資料:MLC「European Handbook」
  注:枝肉換算ベース、生体牛および調整品を含む



99年に入っても輸出減少の傾向が続く

 99年に入ってもEUの牛肉輸出は前年を下回って推移しており(左図参照)、
99年1月〜3月の主要6ヵ国の牛肉輸出量(調製品、生体牛は含まない。製品重量
ベース)は、前年同期比3.1%減の11万4千トンにとどまっている。

元のページに戻る