◇絵でみる需給動向◇
EUの脱脂粉乳価格の低迷が続いている。指標価格の1つであるドイツの工場渡 し価格は、98年8月から10月にかけて急落し、その後3.75マルク(244円:1マルク =65円)/kg前後の水準で低迷している。 この価格低迷の要因は、EU産チーズの最大の市場であるロシアで、98年8月に 通貨ルーブルが切り下げられたことにより、同国向けチーズ輸出が急減したこと が挙げられる。この影響で、EU域内のチーズ生産が減少した結果、脱脂粉乳に仕 向けられる生乳が増加し、脱脂粉乳生産の増加につながった。 99年に入っても同様の傾向が続いており、EU15ヵ国の99年1〜4月のチーズ生産 量は前年同期比2.5%減の192万6千トンとなった。一方、同時期の脱脂粉乳生産量 は同9.6%増の39万6千トンと依然前年を上回っている。
脱脂粉乳の介入買い入れが99年3月から再び開始されたが、価格の低迷は続い ている。介入在庫の数量は98年8月以降20万トンを超えて推移しており、99年5月 末の介入在庫量は前年同月比54.3%増の23万トンに達している。 ◇図:EUの脱脂粉乳介入在庫量および域内価格◇
しかし、長く続いた価格低迷にもやっと回復の兆しが見え始めた。98年11月の 子牛早期出荷奨励事業の終了や、イギリスにおける子牛と畜奨励金事業の補助金 単価引き下げなどにより、域内の子牛等の飼料向けに脱脂粉乳需要が回復してき ているとみられる。また、輸出についても、ユーロ安の影響でアルジェリア向け などが増加していると言われており、緩みきっていた脱脂粉乳の需給も徐々に改 善しているとみられる。 こうした中、6月のドイツの工場渡し価格は、前年比3.3%安の3.78マルク(24 6円)/kgと依然前年を下回っているものの、わずかではあるが前月を上回った。
5月に発覚したベルギーのダイオキシン汚染問題は収束に向かっている。牛乳 乳製品についても、EUの常設獣医委員会が7月7日、ベルギー産の牛乳・乳製品の 検査結果から規制措置の解除を決定した。だだし、96年に世界を震かんさせた牛 海綿状脳症(BSE)問題以来の深刻な食品汚染となった今回の事件は、回復の兆 しを見せるEUの脱脂粉乳輸出に大きな影響を与えるだけでなく、チーズ輸出にも 影響し、その輸出量が減少した場合、再び脱脂粉乳の生産拡大につながることが 懸念されている。
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