◇絵でみる需給動向◇
イギリス食肉家畜委員会(MLC)によると、98年のEU15ヵ国から域外への豚肉 等(生体豚、調製品およびラードなどを含む)の輸出量(生体豚は枝肉換算ベー ス、その他は製品重量ベース)は、前年比16.1%増の123万4千トン となった。 EUの域外輸出量は、生産量の増加を受けて96年から3年連続して増加している。 これを国別に見ると、全加盟国で輸出が増加しているが、特に生産の増加を背 景にロシアやチェコ向けの輸出が増加したドイツが突出した伸びを示し、前年に 比べほぼ2倍の9万5千トンとなった。豚コレラの影響で97年に輸出を減少させた オランダは、98年には前年比20.9%増の13万8千トンと大幅に増加し、96年の水準 以上に回復した。EU最大の豚肉輸出国であるデンマークも着実に増加し、同3.9% 増の約48万3千トンとなった。 ◇図:EU15ヵ国の豚肉等域外輸出量◇
98年のこのような域外輸出増加の要因は、@97年に主要輸出国の1つであるオ ランダを中心に豚コレラが発生したことなどにより需給がひっ迫した結果、98年 には生産が急増した影響で、EUの枝肉の卸売価格(市場参考価格)が前年の7割 程度の低水準で推移したこと、・域内の需給を引き締めるため、EUが2年ぶりに 輸出補助金の交付を再開したことで輸出価格の大幅な引き下げが可能になったこ となどが挙げられる。
次に輸出先別の動きを見ると、最大の輸出先であるロシア向けは、98年8月の 通貨ルーブルの切り下げなどにより、一時的に輸出が停止したことから大幅な減 少が懸念されていたが、上記理由に加え98年11月にロシア向けに限定した大幅な 輸出補助金の引き上げなどにより、前年比1.7%減の33万5千トンとわずかな減少 にとどまった。第2の市場である日本向けは米国産や韓国産に押され減少した。 これとは対照的に、内臓などを中心とした香港向けは近年急速に増加しており、 中国向けともに高い伸びを示している。香港向けの多くは中国へ再輸出されてい ると見られている。また、ポーランドやチェコなどEU近隣の東欧諸国向けの伸び が顕著となっており、これらがロシアや日本向けの減少を補うだけでなく、輸出 量全体を押し上げている。 EU15ヵ国の豚肉等の輸出先別域外輸出量 資料:MLC「European Handbook」 注1:生体豚、調製品およびラードなどを含む 2:生体豚は枝肉換算ベース、その他は製品重量ベース
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