豪州、牛肉食味保証制度が正式にスタート


品質基準を3段階に区分

 豪州では、6月6日からブリスベーンで、消費者に牛肉の食味を分かりやすくア
ピールするための新制度が正式に開始された。当面は限定された地域での実施と
なるが、来年8月までには全国で実施する予定となっている。新しい牛肉食味保
証制度は、ミート・スタンダード・オーストラリア(MSA)と呼ばれ、食肉業界
の中核団体である豪州家畜生産者事業団(MLA)によって管理運営されている。

 MSAの最大の目的は、消費者に牛肉の“食味(おいしさ)”を分かりやすくア
ピールすることにある。このため、MSAは、その品質基準に適合した牛肉をさら
に3段階の等級に区分し、トレイに貼付したMSA適合保証ラベルの色(最上級か
ら順に、金、紫、緑の各色)によって、消費者がその等級を簡単に見分けられる
ように工夫している。


肉牛生産から部分肉に至る評価方式

 MSAは、牛肉の食味を確実に保証するため、従来のような枝肉段階の肉質評価
にとどめず、肉牛の生産流通段階にまでさかのぼった審査基準を定める一方、枝
肉カット後の部分肉の段階で最終的に等級を評価する方式を採用している。

 MSAが、その審査基準を肉牛の生産流通段階にまで広げたのは、肉牛が適切な
環境で飼養され、十分かつ安全な飼料が給与されたことを保証するとともに、牛
肉の色や鮮度の維持に大きな影響を及ぼすとされるpH値を抑制することなどを目
的としている。牛肉のpH値は、肉牛のストレスによって高まるとされているため、
パッカーがMSAの認定を受ける際には(衛生的な食肉処理施設の整備は当然とし
て)、搬入からと畜に至るまで肉牛を適切に取り扱うことのできる施設を整備す
ることも要求されている。


部分肉評価で基準に適合する割合を高める

 また、MSAを部分肉評価方式としたのは、同じ枝肉でも部位によって食味が異
なるという自明の理由以外に、MSAの基準に適合する牛肉の割合を高めるという
目的もある。旧食肉研究公社(MRC:現在はMLAに統合)がMSAの研究を開始し
た当初は、多くの厳しい適合基準(除外対象)が検討されたが、部分肉評価方式
が導入されたことにより、枝肉段階で自動的にMSAの対象から除外されるのは、
pH値が高いもの、骨化の進んだ(年齢の高い)もの、所定部位の脂肪が少ないも
ののみとなった。


経済的負担に対する業界の反応に注目

 現在、MLAは、一定の研修を終了した者をMSAグレーダーとして認定し、これ
らのグレーダーを自ら採用して各食肉工場などに派遣している。また、MSAの等
級評価の一貫性を維持するべく、今後も、企業から独立したグレーダーを養成す
る必要があるとしている。しかし、大手パッカーは、認定を受けた企業職員で対
応可能としており、グレーダーの養成に伴うMSAの運営コスト増加に強く反発し
ている。このため、MLAは、今後2年間は食肉加工業界に追加の資金提供を求め
ないこととし、問題の解決を先送りした。

 また、MLAは、肉牛生産者に対し、2001年1月以降にMSAの認定を受ける場合
には、しかるべき第三者機関の審査を受ける必要があると通告した(それまでに
認定を受ける者には適用されないが、2001年1月以降に認定を更新する場合には
適用される)。

 これらの条件は、既にMSAの認定を受けた1千戸を超える肉牛生産者や、約20
社のパッカーに経済的負担を強いるとみられることから、今後の同制度の発展に
影響を及ぼすことが懸念される。

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