豪州の新食肉検査制度、米国が承認へ


96年以来の懸案事項

 豪州連邦政府は、6月2日、危害分析重要管理点監視方式(HACCP)に基づいた
輸出向け食肉検査制度の改正について、米農務省の承認を得たと発表した。

 今回、米農務省食品安全検査局(FSIS)から承認を得たのは「食肉安全強化プ
ログラム(MSEP)」と称する輸出向けの食肉検査制度である。豪州政府は、 96
年以来、HACCPの導入やと畜加工企業の職員による検査を柱とする食肉検査制度
の改革となる通称「プロジェクト2」の実施を目指していたが、MSEPはこの改定
版と言える。


官から民への検査業務委譲がネックに

 プロジェクト2に関しては、食品安全管理の向上のほかに、受益者負担となっ
ている現行の豪州検疫検査局(AQIS)による検査業務を企業に委譲することに
よって、検査コストの削減、ひいては豪州産牛肉の国際競争力の強化が大きな柱
の1つとなっていた。輸出向けの施設への導入に当たっては、輸入国側政府の同
意が必要不可欠となるが、公式打診を受けた米国は、「官」から「民」への検査
業務の委譲に関して、安全面での信頼性が確保されないとして、プロジェクト2
は受け入れられないと回答していた。

 このため、食肉検査制度の改正は一時、とん挫するかにみられたが、昨年2月
には豪州側の歩み寄りにより、AQISとFSIS共同での見直し作業が開始されていた。


一部の検査工程に米側が譲歩

 すべての輸入国の了解が得られたわけではないが、今回の発表に当たって、ヴ
ェイル農漁林業大臣は「(豪州の)食肉検査制度史上、最も重要な改革であり、
消費者とと畜加工企業の両方に利益をもたらすものである」との声明を、またFS
ISでは「今回の作業における両国の協力関係は、世界貿易機関(WTO)の下での
義務にのっとって行われた好例だ」とする声明を発表している。

 MSEPの詳細については公表されていないが、FSISでは米国の検査制度と同等の
ものと説明している。これまでの豪州側の発表からすると、現行からの大きな変
更点としては、HACCPの下、枝肉処理されて以降の検査については、現行ではA
QIS検査官に限っているが、指定された教育機関で履修した者であれば企業の職
員でも可能になった点などが挙げられる。ヴェイル大臣の発表によれば、現在、
31ある輸出向けと畜加工場がすべてMSEPを導入した場合、約120人の検査官が企
業の職員に置き換わるとしている。


検査コストの大幅削減になるかは不透明

 しかし、枝肉洗浄段階までの個体検査、衛生面での施設全体の管理監督および
製品に対する最終的な衛生証明に関する責任などは、施設に常駐するAQIS獣医
官が負う。このほかにも、AQIS地域巡回獣医官による定期的な現場検査など、連
邦政府による管理運営が少なからず残されるものとみられる。このため、政府が
従来説明してきたような大幅な検査コストの削減となるかは不透明な部分もあり、
と畜加工業界の反応が注目される。

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