冷蔵肉流通にスポットライト(中国)


最も好まれてきた「生鮮肉」

 先進諸国では、通常、食肉の流通は冷蔵や冷凍の状態で行われ、と畜直後の生
鮮肉が販売されることはほとんどなくなっている。中国でもここ数年、衛生上の
問題などから、冷蔵肉の販売が行われるようになってきた。

 中国では、かつて政府による豚肉の割当購入や供給管理政策がとられる一方、
と畜、食肉の流通・販売・輸出が組織化された。この時期に中国の都市部や一部
の地方に住んでいる消費者が食べていたのは、ほとんどが冷凍肉であったと言わ
れている。

 しかし、中国で改革開放政策が進められ、生活水準が向上してくると、柔らか
さに欠け、解凍中や調理中に肉汁が流れ出て色や風味を損なうなどの理由から、
多くの消費者は冷凍肉を嫌うようになった。これに業者の宣伝などもあって、特
に都市部では、と畜直後の生鮮肉(常温肉)にその需要のほとんどが移ったとさ
れる。


冷蔵肉流通の利点を提唱

 生鮮肉は、細菌汚染を招きやすく不衛生であり、また、熟成過程を経ていない
ため、味やにおいの点で食欲に及ぼす影響も大きい。一方、冷蔵肉は、肉の冷却
の過程でほどよく熟成が進み、肉は適度な水分を含み柔らかい上、栄養分の流出
が少ないので、消化吸収も良いなどとして、研究者などが冷蔵肉の消費を数年前
から提唱してきた。中国の食肉関係者によると、中国では1950年代から旧ソ連の
冷蔵技術を習得しようと試みていたが、60年代に入り、さまざまな事情により立
ち消えになったという。現在の中国における業務用豚肉の流通形態は冷凍の半丸
枝肉だが、今後は冷蔵部分肉を普及させたい考えであるともいう。すでに北京、
上海、南京などの大都市では冷蔵肉が市場に出回っており、多くの消費者の好評
を得ているようである。価格は生鮮肉より若干高めだが、上海市における97年の
冷蔵肉の販売高は前年に比べて3千トン増となるなど、冷蔵肉流通は今後盛んに
なりつつある。

 このような状況を踏まえ、今年の3月中旬には、中国肉類研究中心のバックア
ップにより冷蔵肉の鑑定基準が制定された。また、食肉業界も、マスコミを通じ、
冷蔵肉の優れた点を国民に啓蒙している。


困難が予想される冷蔵肉の普及

 こうした冷蔵肉の出現は、生鮮肉の嗜好がきわめて強い中国において、食肉流
通の一大変革であり、人々の食肉に対する固定観念や食習慣を変えてゆくために、
冷蔵肉の特徴や利点などに力を入れて宣伝し、科学的な食肉の知識を普及させる
必要がある。また、冷蔵肉の規格と取扱基準を出来るだけ早期に確立し、法令な
どにより冷蔵肉流通の健全な発展を保証することも重要である。

 しかし、冷蔵肉はどこでも加工生産できるものではなく、先進技術を有する一
定規模以上の加工施設でと畜処理する必要がある。また、コールドチェーンを創
設するなどインフラの整備が必須である。そのため、都市部や一部の県を除き、
冷蔵肉を一気に普及させることは困難とみられる。


依然低落を続ける豚肉価格

 昨年以来低落が続いている豚肉価格は、99年6月に入っても回復の兆しを見せ
ていない。四川省の成都肉類産品卸売市場における99年6月の卸売価格は、冷凍
枝肉では1kg当たり7.3元(約110円:1元=15円)と同年4月に比べわずかに上昇
(1kg当たり0.05元)したものの、冷凍部分肉は1kg当たり10.2元と、4月に比べさ
らに14.3%低落している。

 また、農業部(農業省に相当)が公表している肉豚および豚肉の市場価格も低
落を続けており、99年5月の子豚、肉豚および豚肉の市場価格は、1kg当たりそれ
ぞれ4.69元(約70円)、4.72元(約71円)および8.47元(約127円)で、前年同月
と比較してそれぞれ44.2%、21.6%および19.6%安い水準となっている。

 豚価の長期低迷に対処するため、国内貿易局は各地の国有食品企業に対し、
「保護価格」で積極的に農民から豚を買い上げ、計画的に備蓄するよう指示した
(「畜産の情報」海外編、99年6月号)とされるが、そうした対策の効果はまだ
十分に現れていないようだ。

◇図:成都肉類産品卸売市場価格の推移◇

◇図:豚肉および豚肉小売価格の推移◇

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