ウエットマーケットに冷蔵陳列棚（シンガポール）

食肉販売業者に冷蔵陳列棚の導入を義務付け

　シンガポールでは、生鮮食品のほとんどが小売市場であるウエットマーケット
（東南アジアや中国などで一般市民が食料品など生活必需品を購入する伝統的な
自由市場）および量販店で販売されている。これらの市場では、早朝にと畜した
豚を温と体（おんとたい）で輸送し、その日の昼までに全量を売り切るという方
法を採っているため、冷蔵施設の必要性は低く、また、消費者も温と体の豚肉に
慣れ親しんでいるため、これを好んで購買する傾向にある。

　しかし、先般、マレーシアで豚に発生した伝染病がきっかけとなり、政府は、
これまでの温と体流通から冷と体（れいとたい）流通へ切り替えることを決定し
た。これにより食肉販売業者は、豚肉の場合は99年11月1日までに、鶏肉は2000
年5月1日までに、牛肉および羊肉は2000年11月1日までに、それぞれ冷蔵陳列棚
の導入が義務付けられることとなった。

冷蔵陳列棚はかなり好評

　このたび、シンガポール国内で最も規模の大きいウエットマーケットの1つで
ある、ティオン・バル・マーケットの8軒の豚肉販売店に冷蔵陳列棚が導入され、
販売を開始した。

　この冷蔵陳列棚は、高さ約1.4m、幅約2mで、上部がガラス張りの陳列棚、下部
が保管庫という2段構造になっており、上部の陳列棚に豚1頭分、下部の保管庫に
約2頭分の豚肉を収納保冷することが可能である。

　冷蔵陳列棚を導入した豚肉販売店では、客の顔が見えやすいよう、約15cmの踏
み台の上に乗って販売しているが、客の注文した量に合わせて、豚肉を切り分け
るなどの作業には多少の支障を来しているようである。しかし、今回冷蔵陳列棚
を導入した販売店によると、これは将来のための投資であり、冷蔵施設に慣れれ
ば問題はないとのことである。また、消費者からも衛生的で新鮮に見えるとして、
かなり好評のようである。

かさむ導入コスト、冷蔵流通の普及にはなお問題

　その反面、この冷蔵陳列棚の導入には1台当たり約6,600シンガポールドル（約
47万円：1シンガポールドル＝約71円）の経費がかかり、その経費はすべて食肉
販売店の負担となっている。このティオン・バル・マーケットにおいても何軒か
の豚肉販売店は、高額であることから保冷の効果や使い勝手などが分からないう
ちは導入しないとして、今般の冷蔵陳列棚の導入を見送っている。また、同国内
のウエットマーケットにおける豚肉販売店は約1千軒あるが、これらの販売店す
べてに、冷蔵陳列棚を導入するための電気施設の工事を行うためには、約650万
シンガポールドル（約4億6千万円）もの経費が必要であると言われており、冷蔵
流通への完全な切り替えには、まだ問題が残っているようである。

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