タイ酪農振興公社、民間への売却は不落札


生乳生産者と公社の労働者の反対により延期されていた民間への売却

 タイ酪農の発展に貢献してきた国営企業であるタイ酪農振興公社(DFPO)は、
政府支出経費の削減および政府機関の簡素化などの方針により、今年3月に民間
に売却される予定であった。しかし、生乳をDFPOに出荷してきた多くの酪農家が、
安定した生乳の出荷が確保されない状況下での民間への売却に強い不安を抱き、
また、DFPOの労働者が、雇用確保および既に解雇された労働組合幹部職員などの
復職を求めて売却に反対していた。そのため、政府は、生乳の出荷先の確保およ
び解雇された職員の復職について再度関係者と協議すると同時に、当初予定して
いたDFPOの民間への売却入札を、5月まで延期することで事態の収拾を図ったと
ころであった。


延期された入札は2回とも不落札

 延期されていた入札は5月3日に実施されたものの、応札者は1社のみで、しか
もその入札価格が低水準であったため不落札に終わった。このため、DFPOは、急
きょ、13乳業メーカーを召集して入札条件などの緩和に応じる説明会を開催した
が、ほとんどの乳業メーカーはDFPO売却の入札に関心を示さなかった。

 なお、数社の乳業メーカーは、当初、DFPOが所有する乳業工場と「レッドカウ
ミルク」のブランドについて興味を示していたが、DFPOが要求する額が高額であ
ったことなどが原因で、その関心は薄れていた。

 このようなことから、政府協同組合振興局は、時間をおいて5月28日に再度入札
を実施したが、結果は失敗に終わった。


当面はDFPO幹部職員が運営、効率的な経営は困難か

 このため、DFPO売却実行委員会は目下の最善策として、人員削減に反対してい
る幹部職員にDFPOの運営責任をゆだねることとし、DFPOが定めた債務返済の目
標を5年以内に満たすことができなかった場合には、職員の合理化を図った上で、
再度民間への売却を検討するという対応案の承認を同局に求めている。

 なお、DFPOは、1ヵ月当たりの収入が約8千万バーツ(約2億7千万円:1バーツ
=約3.4円)であるのに対し、支出はそれを大きく上回っているため、負債総額が
約6億バーツ(約20億円)に膨らんでいると見込まれている。

 加えてDFPOの職員は、営業経験および運営知識などが不足しており、効率的な
経営は難しいものとみられている。さらに、DFPOは、経営危機を打開するに当た
り、DFPO自身で解決することが不可能で、しかも長期にわたり放置されてきた多
くの問題を抱えていることから、同委員会が求めている対応案は、単に問題を先
送りにしただけであるとの批判が強い。政府は、DFPOの民間への売却を強行する
のか、それともDFPO職員の生き残りをかけた運営を継続させるのか、早急な判断
を迫られている。

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