豚肉生産者団体が加工場建設構想を発表(米国)


協同組合方式の施設整備

 全国豚肉生産者協議会(NPPC)は6月10日、減少する豚肉処理加工場のと畜処
理能力を補完するとともに、肥育豚価格の安定に資するため、生産者協同組合方
式による豚肉処理加工場の建設構想を発表した。本案件は、NPPC理事会が、賛成
14、反対0、棄権1(パッカー代表の理事)で採択したもので、今後、その詳細に
ついては、検討の過程でさまざまな議論を呼ぶものと予想される。


目的は処理能力の増強による市況のテコ入れ

 構想の背景には、昨年来の記録的な肥育豚価格の低迷がある。価格低落の原因
の1つとして、肥育豚出荷頭数が生産の拡大により豚肉処理加工場のと畜処理能
力を上回っていたことが挙げられており、NPPCは、パッカーに対して、と畜処理
能力の向上や米国産の肥育豚をカナダ産よりも優先して処理することなどを要請
していた。NPPCの調査によれば、1日当たり250頭を超えると畜処理能力のある工
場合計の処理能力は、98年2月時点で約41万5千頭/日であったものが、食肉処理
加工場への環境規制の強化や設備の老朽化による工場閉鎖などにより、99年2月
には約38万9千頭/日(前年比6.2%減)と96年水準にまで落ち込んでいる。

 一方、豚肉の小売価格は、肥育豚価格の下落率と比較してそれほど低下してい
ないため、生産者側の不満の種となっていた。


自ら手がける高付加価値製品の生産

 NPPCの構想では、生産者協同組合が、肉豚のと畜、加工処理に加え、豚肉や豚
肉加工品の販売までを行い、製品ブランドの確立などを通して消費者ニーズに合
った付加価値の高い豚肉生産を図るとともに、生産者から肥育豚をより高い価格
で買い入れる役割を果たすとしている。

 現段階では、設立する生産者協同組合の数、豚肉処理加工場の設置場所や建設
数など具体的なことは決まっていないとしているが、NPPCのアラン・タンク会
長は、計画の初期段階として3つの豚肉処理加工場の建設を提案するとともに、
1日当たり8千頭または6千頭(1交替制)のと畜処理能力規模を例として挙げ
ている。

 また、豚肉処理加工場の建設時期などについても未定としながらも、ピッグサ
イクルの上昇局面により、2002年までには再び肥育豚の生産がと畜処理能力を上
回るとの見通しを引用して、それまでには対応する必要があるとしている。


内外の成功事例を参考に

 NPPCは、構想の詳細な検討に際して、ブロイラー加工処理工場としては全米第
2位のゴールド・キスト社やオレンジのサンキスト社、また、海外では豚肉生産
者協同組合であるデンマーク豚肉輸出機構連合(DS)などの生産者協同組合方式
の成功事例を参考にして検討すべきであるとしている。

 今後、この構想を検討することになる特別委員会は、豚肉処理加工場の建設コ
スト面などさまざまな課題に直面し、う余曲折も予想されるものの、アラン・タ
ンク会長の「何もしないという選択肢は存在しない」という言葉が、米国養豚産
業の置かれている厳しい現状を反映していると言える。

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