USDA、改正後の土壌保全留保事業の概要を発表(米国)


環境保護政策として機能

 米農務省(USDA)経済研究局(ERS)は、このほど、96年農業法による改正後
に実施された土壌保全留保事業(CRP)の過去3回(第15、16、18回。第17回につ
いては、継続申し込みのため除外)の契約概要を明らかにした。CRPは従来、生
産調整的要素の強かった事業であるが、これらの結果を見ると野性動物保護など
の環境保護政策として機能していることがうかがえる。


長期的な土壌保全への助成

 CRPは、85年農業法で導入されて以来継続して実施されており、USDAの環境政
策の根幹の1つとなっている。本事業は、土壌浸食の防止や水質保全、野性動物
保護のため、農地を農業生産から隔離し、農地所有者が長期的な土壌保全利用を
行う場合に、10〜15年間の借地料および土壌保全経費の一部(50%以内)を助成
するものである。なお、96年農業法において、CRPの契約対象面積の上限が2002
年まで3,640万エーカー(約1,470万ha)とすることが定められている。また、こ
れに伴うUSDAのCRP規則改正によって、環境便益指数(EBI:Environmental Bene
fits Index)および借地料の入札制度が導入された。

 EBIは、・野性動物保護(100ポイント、以下略)、・水質保全(100)、・土壌
浸食低減(100)、・永年性(50)、・大気保全(35)、・保全優先地域(25)の
環境6要素および費用(150、借地料の入札価格が低ければ高ポイントとなる。)
により算出され、最大は560ポイントとなっており、このポイントが高い順に契
約が行われる仕組みとなっている。


EBI、借地料とも上昇傾向で推移

 ERSよれば、平均EBIは、契約回数を重ねるごとに増加しており、第15回(申込
期間:97年3月)259ポイント、第16回(同97年10〜11月)279ポイント、第18回
(同98年10〜12月)282ポイントとなっている。

 中でも・野性動物保護の要素については、かん木や草木などの土壌被覆作物の
植え付けにより、第15回50、第16回63、第18回68とそのポイント数が上昇してい
る。加えて、耕作湿地の修復に係る契約面積のシェアは、第15および16回が5%
であったものが、第18回には9%と増加している。

 一方、CRPの対象となる土壌浸食指数(注)(EI:Erodibility Index)が8以上の
環境的にぜい弱な農地の契約面積シェアは、第15回の85%から第18回の66%へと
減少しており、当該対象農地が早めに契約を済ませていることがうかがえる。こ
のため、・土壌浸食低減については、第15回53、第16回41、第18回37とポイント
数も減少している。

 また、借地料は、第15回は従前と比較して大幅に低下したものの、その後、中
西部地域の契約の増加に伴い上昇傾向で推移している。

(注)EIは、保全の必要性を示すために、農地固有の浸食危険度を指数化したも
 ので、土壌の保全を行わなかった場合における潜在的な平均年間浸食率などか
 ら計算される。CRPの対象農地は、EIが8以上であるが、EI15以上の特にぜい弱
 な土地については、中途解約は認められていない。

(参考)

USDA所管の主な環境対策事業
kankyou.gif (10391 バイト)
 注:地役権とは、他人の土地を自分の便益のために利用する権利。


大規模な契約申し込みは今後予定されず

 第18回目のCRP契約申し込みでは、約5百万エーカー(約2百万ha)の農地が承
認され、99年10月1日現在のCRP契約対象面積は、3,130万エーカー(1,270万ha)
と見込まれる。また、98年2月に発表された水質保全アクションプランに基づき、
CRP対象面積の4百万エーカー(160万ha)が留保されていることから、今後、大
規模な契約申し込みの予定はないとみられる。

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