◇絵でみる需給動向◇
米農務省(USDA)によると、98年 1 〜10月の牛肉輸入量(枝肉換算ベー ス、以下同じ。)は、前年同期比11.3%増の100万 4 千トンになった。98年 の輸入量は、10月までの累計で、95、96年の年間輸入量を既に上回っており、 97年の年間輸入量にも迫る水準にあることから、98年通年では97年の輸入量 を超えることは確実とみられている。 ◇図:牛肉輸入量◇
これを国別に見ると、北米自由貿易協定(NAFTA)により輸入量の制限がな く、関税がゼロとなっているカナダからの輸入は、前年同期比17.3%増の30 万 8 千トン、97年の関税割当枠の約040割が未消化であった豪州からは、同 28.1%増の32万01 千トンとなり、両国からの輸入量は大幅に増加している。 一方、これとは対照的に、97年の関税割当枠をほぼ消化したニュージーランド からの輸入は、同3.6%増の24万 4 千トンにとどまっている。なお、総輸入量 に対する 3 国のシェアは、87.0%となっており、前年から4.7ポイント上昇し た。 ◇図:国別牛肉輸入量◇
米国が輸入する牛肉の大半が、ひき肉製品製造などに用いられる加工向 け牛肉であるが、これら輸入牛肉と米国において品質面で競合しているの は、経産牛から生産される牛肉であるとみられる。98年 10〜11月まで の経産牛のと畜頭数は、前年同期比8.3%(48万 3 千頭)減の534万 6 千頭と大きく落ち込んでおり、加工向け牛肉の国内供給が減少したことが、 牛肉輸入量増加の要因の 1 つとなっている。 経産牛のと畜頭数減少の背景には、・98年夏に南部を中心に見舞われ た干ばつの影響で、肉用経産牛のと畜頭数が一時増加したものの、通年で はキャトルサイクルの下降局面にあることで牛群規模が減少したため、と うたされる肉用経産牛の頭数も減少したこと、・乳価が記録的な高水準に あることを受けて、生乳生産の拡大を図るための即効的な方策として搾乳 牛の供用年数が延長されているとみられることから、乳用経産牛のと畜頭 数が、同9.6%減と例年に比べ大幅に減少していることなどが挙げられる。 ◇図:経産牛のと畜頭数◇
乳用経産牛のと畜頭数減少は一時的なものであるが、肉用経産牛につい ては、少なくともキャトルサイクルが上昇局面に転じるまでこの傾向が続 くものとみられる。このため、経産牛のと畜頭数の減少傾向は今後数年続 くものと見込まれている。USDAは、99年の牛肉輸入量が前年比6.9% 増の126万 6 千トンに拡大すると予測している。
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