世界の飼料穀物の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○低水準で推移するトウモロコシ価格


96年ピーク時の半値以下

 米国のトウモロコシ価格(シカゴ相場の先物、期近価格、各月末の終値。 1 ブ
ッシェル当たり)は、98年 2 月以降前年割れの水準で推移しており、 8 月に
はローンレートを下回る 1 ドル87セントまで下落した。その後、やや持ち直
し12月には前年同月比19%安の 2 ドル14セントとなった。

 98年の平均は、前年比15%安の 2 ドル32セントで、90−97年の平均( 2 
ドル69セント)の14%安、生産減と国内外の需要増により 5 ドルを超えた
96年 6 月と比較すると半値以下の水準となった。

◇図:トウモロコシ価格の推移◇


輸出不振が影響

 価格の低迷は、輸出不振によるところが大きいものとみられる(97/98年度は、
前年度比16%減)。国内需要は、飼料用などを中心として増加したものの、主
として経済危機に陥ったアジア市場向け輸出の不振により、96年農業法による
作付制限の撤廃などで拡大した供給分を消化することができなくなった。また、
米国に次ぐ輸出国で史上最高の豊作(1,900万トン)を記録したアルゼンチンと
の競合激化も、要因の一つとみられる。


政府による救済措置を実施

 96年農業法における、不足払いの廃止を始めとする政府の政策関与削減が実
現した背景には、財政的な制約条件に加えて、予測される生産の増加に対して
輸出市場も拡大するという想定があった。しかし、現実には輸出不振という事
態に陥り、価格が大きく下落したことから、政府による救済措置が必要となっ
た。

 具体的には、98年10月21日に成立した99年包括歳出法案に以下の措置な
どが盛り込まれている。@生産柔軟化契約(PFC)による98年度分の直接支払
い(注)への追加(0.19ドル/ブッシェル)、Aア.自営業者の健康保険に係る
保険料控除率の段階的引き上げ(現行の45%から2003年の100%へ)、イ.
所得の経年平均化、などの税制面での措置。

 また、98年11月 6 日には、対ロシア食糧援助として、公法480号・タイト
ルTに基づく低利融資による輸出プログラム(トウモロコシは50万トン)や無
償輸出の実施が発表された。


価格の大幅な上昇は、期待薄

 生産者を取り巻く経営環境としては、金利の低下、原油安による燃料費の減
少、遺伝子組み換え種子の活用による殺虫剤や除草剤に係る費用の軽減、輸出
競合国であるアルゼンチンでの減産見込みなど、プラスの面もあるものの、全
体的な増産傾向の中で、価格が大きく上向く可能性は、依然として低いものと
みられている。なお、米農務省(USDA)は、98/99年度の価格(農家販売価格)
について、1.80−2.10ドル/ブッシェルと予測している。

(注)生産柔軟化契約(Production Flexibility Contract)による直接支払い

 過去 5 年間(91〜95作物年度)に 1 年以上減反計画に参加した農家が、作
付作物の収穫および作付面積の実績に基づき、政府と契約(生産柔軟化契約)
を結んだ面積の85%を対象として、一定の直接支払いを 7 年間受給できる制
度。

 (「畜産の情報」海外編97年 2 月号、49−50ページ参照)


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