EUの牛乳・乳製品の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○97年の主要乳製品の域外向け輸出−バター、脱脂粉乳は増、チーズは減−


バター20.3%、脱脂粉乳22.8%増

 ドイツ市場価格情報センター(ZMP)によれば、97年におけるEU15カ国の
主要乳製品の域外向け輸出は、バターおよび脱脂粉乳が大幅に増加、チーズは
やや減少となった。

 バターは、同年後半国際需給がひっ迫し、最大の輸出先であるロシア向けが
過去最高の 8 万トン(前年比3.6倍)となったのをはじめ、主要輸出先である
サウジアラビア向けなどの輸出も増加したことから、前年比20.3%増の16万 5 
千トン(暫定値、以下同じ)となった。また、脱脂粉乳も、最大の輸出先であ
るメキシコ向けの12万トン(前年比58.3%増)やアルジェリア向けなどが増加
したことから、前年比22.8%増の28万トンとなった。


チーズ3.9%減

 一方、ガット・ウルグアイラウンド(UR)合意に基づく輸出補助金の削減約
束実施の影響により、95年以降輸出が減少しているチーズは、世界最大の乳製
品輸出国であるニュージーランド(NZ)や主要輸出国の 1 つである豪州との
競争激化などにより、前年比3.9%減の49万 7 千トンとなった。また、これを
受けて、97年の世界の乳製品貿易におけるEUの輸出シェアは、バター(バタ
ーオイルを含む)が26%、脱脂粉乳が27%と前年のシェアを維持したのに対し、
チーズは前年に比べ 4 ポイント減少し43%となった。EUのチーズ輸出シェア
は、世界貿易量の順調な拡大とも相まって、95年以降低下している。

 なお、ここで特徴的なことは、97年におけるEUのバター輸出に占めるロシ
ア向けの割合がほぼ 5 割、チーズ輸出に占める割合がほぼ 4 割(前年に比べ
ほぼ倍増の19万05 千トン)となったことである(これらの詳細は巻末資料 9 
ページ参照)。

◇図:EUの主要乳製品の域外向け輸出量◇


98年は軒並み大幅減の見込み

 ZMPによれば、98年上半期の主要乳製品の域外向け輸出は、バター、脱脂粉
乳、チーズとも軒並み減少となった。バターおよび脱脂粉乳はそれぞれ前年同
期比43.1%減の 6 万 6 千トン、33.1%減の10万 1 千トンと大幅に減少し、
また、チーズは8.8%減の22万 9 千トンとなった。この原因としては、97年
後半からのタイやマレーシアなどで発生した通貨急落による経済危機の影響が
続いていること、また、98年に入りロシアで顕著になった経済不振により、輸
入需要が大きく減少したことが挙げられる。このような状況の中で、NZや豪州
などとの輸出競争が、一層激化している。

 さらに、ロシアで98年 8 月に発生した経済危機は、EUの域外向け輸出に
一段と悪影響を及ぼしている。 8 月以降同国への輸出はほとんど行われておら
ず、これまでチーズ生産(生乳の仕向け量の 3 分の 1 以上を占める)に仕向
けられていた生乳の一部が、バターや脱脂粉乳に仕向けられている。この結果、
これらの生産が増加し需給は緩和傾向に向かいつつある。EUはこれに対処する
ため、10月からUR合意遵守という厳しい条件の中で、ロシア向けなどのチー
ズに対する輸出補助金を大幅に引き上げた。こうしたことから、98年における
EUの主要乳製品の域外向け輸出は、前年に比べ大幅に減少することが見込まれ、
これが今後のEUの乳製品需給に深刻な影響を及ぼすことが懸念される。


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