EUの豚肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○価格は歴史的な安値を記録(デンマーク)



98年9月からは過去24年間の最安値を更新中

 EU最大の豚肉輸出国であるデンマークの98年12月の豚枝肉卸売価格(EU
市場参考価格算定の基礎となるデンマーク国内の平均価格、以下「豚肉価格」)
は、前年同月を37.8%(前月を1.3%)下回る673クローネ(約 1 万 3 千円: 
1 クローネ=19円)/100kgとなった。同国の豚肉価格は、97年11月以降低
下傾向となっており、98年9月からは過去24年間における最安値(75年の平
均価格:776クローネ(約010万 5 千円))を更新している。98年の平均価
格827クローネ(約 1 万 6 千円: 1 〜12月の月別価格の単純平均)でも、
過去 2 番目の安値となった。

◇図:デンマークの豚枝肉卸売価格の推移◇


依然として続く肉豚供給増、ロシア経済危機が価格低迷に拍車

 この原因は、EU最大の豚肉生産国であるドイツや第 2 位の生産国であるス
ペインなど主要生産国と同様に、デンマークでも繁殖用雌豚頭数が増加し、依
然として国内での肉豚供給の増加が続いていることにある。ドイツ市場価格情
報センター(ZMP)によれば、98年10月 1 日現在の同国の繁殖用雌豚頭数は、
前年同期比7.1%増の132万 1 千頭となっており、今後も高水準の肉豚供給が
続くことが確実である。この結果、ZMPでは、デンマークの98/99年度( 7 月
〜 6 月)の豚と畜頭数は、前年同期比 4 %増の2,267万頭と予測している。
この背景には、96年以来の牛海綿状脳症(BSE)問題による代替需要や、97
年のオランダなどにおける豚コレラ発生などにより同国の輸出が好調であった
結果、97年上半期を中心に堅調に推移した豚肉価格に養豚農家が生産意欲を刺
激された影響などがある。

 さらに、デンマークの豚肉輸出が近年大幅に増加しているロシア(98年上半
期の輸出量は製品重量ベースで前年比64.4%増の約 7 万2千トン)で、98年 8 
月に通貨急落による経済危機が発生し、実質的に輸出が停止する状態となった
ことなどが、価格の低迷に一層拍車をかけている。なお、98年12月の欧州統
計局の公表によれば、同年のデンマーク農家の実質所得は、豚価大幅低落の影
響を受けて前年比22%の大幅な減少となることが見込まれている。


PSAやロシア向け輸出再開により上昇に転じる可能性

 こうした中、EU委員会は98年9月28日から、デンマークをはじめとする
各国豚肉価格の大幅な低下を受けて、民間在庫補助(PSA:Private Storage 
Aids)を実施しており、12月8日現在でPSAに係る申請数量は当初の対象数
量( 7 万トン:製品重量ベース)を超える約8万 6 千トンに達した。同国か
らの申請が約3万 5 千トンと最も多く、全体の約 4 割を占めている。また、
申請数量のうち約 6 万 5 千トンが補助対象となり、その 8 割以上が 6 カ月
在庫、また、 4 割が骨なしロースとなっている。なお、EU委員会はこれを受
け、対象数量を当初の数量から引き上げる方針である。

 また、11月23日からのEU最大の豚肉輸出先であるロシア向けに限定した
輸出補助金の大幅な引き上げ(生鮮・冷蔵の枝肉や骨付きバラ肉などの補助金
を40ECU(約 5 千 6 百円:010ECU=141円)/100kgから70ECU(約 9 
千9百円)へ)により、同国向け豚肉輸出が再開されたことが報告されている。
さらに、ロシア向けには 1 月以降、食糧援助物資として10万トンの豚肉が市
場から購入され、輸出される。

 これらに加え、現在の低価格による豚肉加工会社からの引き合いもあって、
ドイツなど一部加盟国の豚肉価格は上昇に転じた。EUの98年12月の豚肉価
格も、97.8ECU(約 1 万040 千円)/100kgと98年 6 月以来半年ぶりに上
昇に転じた。したがって、これまで歴史的な安値を記録していたデンマークの
豚肉価格も、今後、上昇に転じる可能性があるとみられる。


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