EU産豚肉の輸入についてEUと協議(チェコ)


輸入急増で国内豚肉価格が大幅に下落

 チェコ共和国政府は12月 1 日、EU産豚肉の輸入についてEU委員会と協
議を行った。同国では、98年後半から低価格のEU産豚肉の輸入量が急激に増
加し、国内の豚肉価格が大幅に下落したため豚生産者などからその対策が求め
られていた。今回の協議は、チェコがEUに対して何らかの対策を講じるよう
申し入れるため行われたものである。


EUの輸出補助金引き上げにより国産豚肉の競争力が低下

 EUの豚肉市場は、現在、生産量の増加および最大の輸出先であるロシアの経
済危機などの影響により、97年後半から需給が緩和基調となり急速に市場価格
が下落し、その後も低迷が続いている。このため、EUでは、98年 9 月から豚
肉の民間在庫補助制度を開始するとともに、主に中・東欧諸国向けを対象に98
年 8 月および10月の 2 度にわたり豚肉輸出補助金をそれまでの約 2 倍に引
き上げた。また、11月からは、ロシア向け豚肉輸出補助金を大幅に引き上げる
措置を採った。この結果、これまでより低価格のEU産豚肉が域外に輸出され
ることとなった。

 一方、チェコにおける97年の畜産物生産費をEUと比較すると、豚肉はEU
の83%(同比較:牛乳65%、牛肉71%、鶏肉77%)で比較的差が小さい。この
ため、EUの豚肉輸出補助金引き上げにより低価格のEU産豚肉が輸入され、国
産豚肉価格が大幅に下落したものとみられる。同国における豚肉の需給状況は
次の通りである。


資料:EU委員会、「中・東欧諸国の農業の現状と今後     
   の需給見込み」
 注:97年は見込値


EUはチェコの申し入れに事実上対応

 今回の協議では、当初チェコが対抗措置として提案していた豚肉輸入関税率
の引き上げは当面実施しないことで合意した。これは、98年 8 月以降のチェ
コにおける豚肉輸入実績が未確定なため、急激な輸入数量の増加が実証されな
いとEUが指摘したためとみられる。なお、ハンガリーでも、価格面で国産豚
肉と競合するEU産豚肉の輸入量が増加したため、その対策として豚生産者に
対する補助金の引き上げ、輸出補助金の引き上げなどの措置が採られた。

 こうした中、EU豚肉管理委員会は12月 8 日、 9 日からチェコやハンガリ
ーなど中・東欧諸国に対する豚肉の輸出補助金を引き下げることを決定し、事
実上チェコの申し入れに対応する形となった。これにより、同諸国向けの枝肉
や部分肉(生鮮・冷蔵)に対する輸出補助金はこれまでの40ECU(約 5 千 6 百
円: 10 ECU=141円)から20ECU(約 2 千 8 百円)などとなった。した
がって、今後、豚肉貿易をめぐり中・東欧諸国とEUとの間で問題が発生する
可能性は少ないとみられる。


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