米国・カナダ、 2 国間の農畜産物市場開放対策に合意


カナダ、米国産農畜産物の市場アクセス機会を拡大

 米国サウスダコタ州で、 9 月16日から開始されたカナダ産の生体牛、生体
豚および穀物に対する輸入規制は、カナダ国境沿いの各州に波及した。このた
め、カナダ政府は北米自由貿易協定(NAFTA)および世界貿易機関(WTO)
協定に基づく協議を要請したが、米国州政府による輸入規制の撤廃および 2 国
間の貿易問題に関する協議の開催を条件として、この要請を撤回していた(詳
細は98年11月号北米トピックス参照)。

 その後、約 2 ヵ月にわたる 2 国間協議の末、米・加両国政府は、12月 4 日、
農畜産物市場開放対策について合意したと発表した。合意内容は、主にカナダ
が米国産農畜産物に対する市場アクセス機会の拡大を図るものとなっている。

 畜産物関係では、・オーエスキー病の清浄地域である米国33州からの肥育豚
輸出に係る30日間の検疫を即時中止すること、・現在、米国ワシントンおよび
モンタナ州を対象として実施している北西部パイロットプログラムに基づく肥
育素牛のカナダ向け輸出の対象州を26州に拡大すること、・今後30ヵ月以内
に、家畜伝染病の清浄地域の取扱いを国単位から地域単位に改めることなどカ
ナダの動物衛生規則を見直すこと、・動物用医薬品の残留許容量などに関する
米・加両国の統一基準を策定することなどが挙げられている。

 また、穀物関係では、・米国北部州などからカナダへの穀物の鉄道輸送を解
禁すること、・カーネル・バント(黒穂病)の清浄地域である米国14州からの
小麦輸出に係る植物検疫を免除すること、・米国モンタナ州、ノースダコタ州
産小麦のカナダ向け輸出促進プログラムを実施することなどが挙げられている。


米北部の州政府はこの合意を評価、一方、一部生産者は抗議行動を再開

 米農務省(USDA)および米通商代表部(USTR)は、「今回の対策はあくま
で第 1 段階であり、両国間における農畜産物貿易問題を全て解決するものでは
ない。しかし、厳しい状況にある米国生産者にとっては朗報であり、今後とも
カナダ農畜産物市場の解放に向けて努力する」と発表した。

 カナダ産農畜産物の輸入規制を行った05 州の知事は、今回の対策を評価する
としており、特にジャンクロウ・サウスダコタ州知事は、USTRが改善に向け
て努力を続けている限り、州としての規制措置は行わないとしている。また、
米国の畜産団体である全国肉牛生産者・牛肉協会(NCBA)および全国豚肉生
産者協議会(NPPC)は、今回の対策はカナダへの生体牛および生体豚の輸出を
促進するものであるとして歓迎の意を示している。

 しかしながら、カナダ国境沿いの米国の生産者などは、今回の対策がカナダ
産農畜産物の輸入規制につながらなかったことや、カナダのダンピング輸出に
言及されていないことを不服として、当初予定どおり、対策発表の 2 日後の12
月 6 日に、モンタナ州スウィートグラスをはじめとするカナダ国境沿いの町で、
農畜産物の輸入抗議活動を再開した。

 こうした事態を受けて、カナダ政府は、米国農民による輸入抗議活動の再開
に対して遺憾の意を表明するとともに、米連邦政府に対して必要な措置を講じ
るよう申し入れを行った。


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