EUの牛肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○成牛価格および枝肉卸売価格が下落


成牛価格は21ヵ月ぶりに120ECU台に

 97年6月以降、前年同月を上回って推移してきた成牛価格(市場参考価格:各
加盟国の指定市場における成牛取引価格を加重平均したもの)は、98年9月から
下落している。11月には、前年同月を5.2%下回る128.4ECU(19,600円:1ECU=
148円)/100kgと、97年 2 月以来21ヵ月ぶりに120ECU台となった(左図参照)。

 国別に11月第4週時点の成牛価格を見ると、加盟国間でその動きは異なるもの
の、ベルギーが前年同月を25.3%下回ったのをはじめ、牛肉3大生産国であるフ
ランス、ドイツ、イギリスでも、それぞれ0.7%、7.0%、4.3%下回るなど、総じ
て下落傾向で推移している。


枝肉卸売価格も低落傾向で推移

 成牛価格の下落を受けて、枝肉卸売価格も下落傾向で推移している。98年10月
の去勢牛の枝肉卸売価格(R 3 とR 4 グレードの加重平均価格)は、前年同月
を8.6%下回る242.2ECU(35,800円)/100kgとなった。去勢牛の枝肉卸売価格は、
成牛価格の動きとほぼ連動しており、97年後半以降安定的に推移してきたが、98
年 8 月から下落している。

◇図:牛枝肉卸売価格(去勢牛)(R 3 とR 4 グレードのEU加重平均価格)◇


ロシアの経済危機が大きく影響

 このように、成牛および枝肉卸売価格が下落傾向を強めている背景としては、
最大の牛肉輸出先であるロシアで8月に経済危機が顕在化し、同国向け牛肉輸出
が実質的にストップしたことが挙げられる。97年におけるロシア向け牛肉輸出は、
35万 4 千トンでEUの牛肉輸出量の 4 割強と断然トップを占めていた。


季節的にと畜頭数が増加

 さらに、EU加盟国の中には、放牧主体による生産構造からと畜頭数が秋から初
冬にかけて集中する国もあり、このことが価格低落に拍車をかけている。例えば、
アイルランドの過去 5 年間(93〜97年)の 9 〜11月におけると畜頭数の割合は、
年間と畜頭数の37%に達している。EUでは、このようにと畜が一時期に集中する
加盟国を対象に共通農業政策(CAP)の下、と畜時期の偏りを是正するために季節
性是正奨励金(DSP ; Deseasonalisation Premium)が交付されている。


食糧援助でロシア向けに牛肉15万トンを供給

 EU委員会は11月 9 日、総額 4 億 7 千万ECUに上るロシアに対する食糧援助を
実施することを提案した(トピックス参照)。援助物資の中には牛肉15万トンが
含まれており、これは 8月末現在で54万9千トンに達する牛肉の介入在庫から充
当される計画となっている。牛肉関係者の間では、今回の食糧援助により介入在
庫の減少が図られ、EUの牛肉需給に何らかの好影響を及ぼすのではないかと期待
されている。


元のページに戻る