世界の飼料穀物の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○主要国のトウモロコシ生産動向


前年度比3%の増加

 米農務省経済調査局(USDA/ERS)は、98/99年度における世界のトウモロコシ
生産量について、最大の生産国である米国で史上2番目となる豊作が見込まれる
ことなどから、前年度比3%増の5億9千7百万トンと予想している。

 米国では、ほぼ収穫が終了しており、天候に恵まれたことなどから、生産量は、
前年度比5%増の2億5千万トンと予測されている。


EU、アルゼンチンで減産

 米国、中国に次ぐ生産量を有するEU(15カ国)については、前年度比12%減
の3千4百万トンと見込まれている。小麦や大麦が増産となった一方で、トウモ
ロコシが減産となったのは、ギリシャやイタリアでの夏の熱波、EU最大の生産
国である、フランスでの7月の降雨不足や8月の高温といった天候要因により、
単収が減少したためとみられる。

 一方、現在作付け中のアルゼンチンでは、トウモロコシが供給過剰気味で価格
が低迷していることなどを嫌忌して、作付面積が減少しているため、生産量は、
史上最高となった前年度に比べて30%減の1千4百トンと予測されている。


ロシアでは前年度の半分以下に

 ロシアについては、土壌劣化により作付面積が減少したことに加えて、夏場に
干ばつ被害を受けたこと、刈取機械やそれに供する燃料が不足していることなど
から、前年度比63%減の100万トンと予想されている。

 なお、実際の生産量については、生産者がバーターなどの違法取引を行うため
に過小報告していることから、当該数値よりも多いのではとの見方も報じられて
いる。


中国、前年度比19%増、98年穀物改革にはUSDAが疑問符

 中国では、7、8月に発生した大雨による揚子江の氾濫で、流域の耕地が大き
な被害を受けたが、トウモロコシの主要生産地である北部については、比較的天
候に恵まれたことなどから、生産量は、1億2千4百万トンと前年度比19%の増
産が見込まれている。

 一方、98年春に朱 基首相は、穀物流通体制改革を発表したが、この中では、
二重価格制度の下で、生産者が販売を希望すれば、全量を買い入れることが、地
方政府に義務付けられたほか、民間業者は、生産者から穀物を直接買い付けるこ
とができなくなるなど、政府による独占的な管理が強化された。

 USDA海外農業局(FAS)は、同改革に関するレポートの中で、全量買い入れする
措置が、生産者の増産意欲を刺激するため、買入れに係る財政負担のさらなる増
大につながるとみている。中国政府は、既に92年4月以来 250億米ドル(約3兆
円:1ドル= 122円で換算)の損失を被っていると報告されている。また、流通
効率化において主要な役割を演じてきた民間業者を排除することについて、穀物
流通システム改善の妨げになるものとコメントしている。さらに、生産・在庫が
余剰となった時には、価格競争力を高めるための補助金付き輸出や輸入規制を実
施する可能性があることを示唆し、現在申請中の WTO加盟の流れに逆行するとの
懸念を示した。

 なお、朱 基首相は、98年11月に開催された穀物流通改革に関する今年4回目
の全国フォーラムにおいて、地方政府の生産者からの買入独占の重要性を強調し、
また、地方政府の傘下に穀物の保管などを行う子会社の設立を許可することなど
により、当該改革をさらに推進していく意向を表明している。


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