◇絵でみる需給動向◇
豚肉は食文化の歴史から、台湾で最も重要な食肉である。近年における経済発 展を背景とした所得の向上から食肉消費は増加する傾向にあるが、中でも豚肉の 占める割合は大きい。 96年の1人当たり豚肉消費量(枝肉換算ベース)は40.6kgと86年の34.7kgから 17.0%増加しているが、食肉消費全体に占める割合は7ポイント低下して54.1% となった。食肉消費全体が伸びる中で豚肉のシェアが低下しているのは、カモや アヒルなどを含む家きん肉の消費が増加してきたからである。家きん肉の消費量 は10年間で19.8kgから30.5kgに伸びており、その増加率は豚肉を大きく上回る54 .0%となっている。一方、牛肉の消費については、絶対量も伸びも依然として小 さい。 なお、豚肉消費は増加傾向を示しているものの、97年3月に発生した口蹄疫が 台湾の豚肉消費に及ぼした影響は大きいと考えられることから、今後公表される 97年以降の食肉消費のデータに注目したい。 1人当たり食肉消費量 注:( )内はシェア ◇図:1人当たり食肉消費量の推移◇
97年3月以降のいわば「閉鎖市場」の中で、豚肉小売価格は肉豚卸売価格の乱 高下にもかかわらず、比較的冷静さを維持している。今年 2 月から 8 月にかけ て、肉豚卸売価格が2倍以上に急騰した際にも、小売価格は「ロース」、「かた」 および「ばら」でそれぞれ13.9%、2.3%および18.4%の上昇に止まった。また、 伝統的に人気が高く日本向け輸出の停止および豚のと畜頭数の大幅な減少から、 一時不足が伝えられた内臓類に関しても「ガツ(胃)」、「ハツ(心臓)」、「マメ (腎臓)」、「タン(舌)」および「レバー(肝臓)」がそれぞれ同期間におい て13.0%、20.9%、6.0%、3.3%および25.9%高と肉豚卸売価格の上昇率と比較 すると小幅な値上がりに止まったと言える。 ◇図:豚肉小売価格の推移◇ ◇図:豚内臓小売価格の推移◇
台湾では、わが国で一般に低級部位とされる「ばら肉」および内臓に人気があ り高値で取り引きされるため、他の部位を安価で輸出でき、このことも台湾産豚 肉の輸出競争力を高める役割を担ってきたと考えられる。しかし、98年2月、台 湾は世界貿易機関(WTO)加盟をにらんだ米国との交渉の結果、「ばら肉」および 内臓の段階的な市場開放を受け入れることとした。この交渉に基づく輸入が一部、 既に始まっていると言われており、今後、輸入が肉豚・豚肉価格の一時的な変動 の調整弁として機能することも考えられる。
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