米国の豚肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○USDA、豚肉製品の買い入れで価格支持


10月の豚肉生産量、過去最高を記録

 米農務省(USDA)によると、10月の豚肉生産量(枝肉換算ベース:生産者の自
家消費分を除く)は、前年同月比6.3%増の79万7千トンとなった(左図参照)。
1ヵ月当たりの豚肉生産量としては、97年10月の75万トンを抜き、過去最高を更
新した。98年の豚肉生産量は、前年に比べて約9%増加すると見込まれている。

肥育豚価格、10ドル台に暴落

 一方、10月の肥育豚価格(主要5市場の平均生産者販売価格)は、前月から3.3
ドル安、前年同月比41.7%安の26.9ドル/100ポンド(72.4円/kg:1ドル=122
円で換算)になった。11月にはさらに低落し、同58.9%安の18.3ドル/100ポンド
(49.2円/kg)にまで暴落したとみられている。月平均の肥育豚価格が10ドル台
にまで低落したのは、71年11月以来のことである。生産過剰が肥育豚価格暴落の
要因であるが、特に肥育豚の出荷量がパッカーの通常の処理能力を上回ったこと
が価格低下に拍車をかけたとみられている。

◇図:肥育豚価格◇

 USDAでは、98年の年間平均肥育豚価格は、約34ドルになるものと予想している。
これは、72年に約27ドルを記録して以来26年ぶりの低水準となる。こうした厳し
い状況の中で、来年の夏までに約 5 分の 1 の養豚経営体が廃業または休止する
と複数の専門家は予測している。

◇図:肥育豚価格の推移◇


価格低迷に悩む養豚団体、政府に対し緊急支援対策を要請

 こうした事態を踏まえ、全国豚肉生産者協議会(NPPC)は、11月20日、クリン
トン大統領に対して、肉豚生産者を救済するための緊急対策を講じることを求め
る要請書を送った。その概要は以下のとおりである。

 @今回の危機に対処するための経済危機対策委員会の設置、A環境保護庁(EP
A)による食肉処理加工場のと畜処理能力に係る規制の緩和などを通じたと畜処理
能力の向上、B政府による豚肉および豚肉製品買い入れの増加、C連邦金融機関
に対する養豚農家向け融資条件緩和の催促、D養豚農家を連邦緊急災害融資保証
事業の対象とすること、などである。

 また、NPPCは、上記Aの要請と併せて、パッカーに対しても、と畜処理能力の
向上とカナダ産ではなく米国産肥育豚の優先処理を行うよう要請している。


USDA、 5 千万ドルの豚肉製品の買い入れを発表

 これを受けるようにして、USDAは同23日、価格支持を目的として、総額5千万
ドル(約60億円)の豚肉製品の買い入れを発表した。対象品目は、米国産豚肉を
使用して生産されたローストポーク、ハム、ひき肉製品などとなっている。これ
らの豚肉製品は、学校給食事業など国内の食料支援プログラムに用いられる。


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