◇絵でみる需給動向◇
米農務省(USDA)が4月に発表した世界の穀物需給見通しによれば、98/99年 度末のトウモロコシ在庫量は、前年度比12.1%増の9,720万トンと92/93年度以来 の高水準に達すると見込まれている。これは、主要生産国である米国および中国 の生産が増加するのに対し、消費が横ばいであることから在庫が積み増しされる とみられているためである。 このような需給情勢から、トウモロコシ価格(シカゴ相場の先物、期近価格の 終値)は長らく低迷を続けており、99年4月末時点では前年同月を11.9%下回る2 ドル15セント/ブッシェルとなった(左図参照)。 世界のトウモロコシ需給 資料:FAS/USDA 注:カッコ内の数値は前年度比
98/99年度の世界のトウモロコシ生産量は、前年度比3.2%増の5億9,250万トン と見込まれている。ここ5年間(94/95〜98/99年度)の生産の推移を見ると、95 /96年度は主要生産国である米国などでの異常気象により大きく落ち込み5億1千 万トン台となったが、96/97年度は需給ひっ迫による価格高騰により生産が刺激 され5億9千万トン台に達した。 今回発表された見通しでは、前回見通しよりも下方修正されたものの、96/97 年度を上回る高水準に達すると見込まれている。
生産量を国別に見ると、世界の生産量の4割強を占める米国が前年度比6.0%増 の2億4,790万トンと高水準の生産が見込まれている。これは、アジア市場など輸 出需要の低迷等により価格が低水準で推移しているものの、遺伝子組み換えなど が急速に生産現場に浸透していることによる単収増加などが生産を押し上げたも のとみられる。さらに、以前は需要に見合った生産として作付制限や減反が実施 されたが、96年農業法によりこれらの措置が撤廃されたことから、全体の需給コ ントロールが困難となったことも一因として挙げられる。 続いて、世界の生産量の2割強を占める中国が前年度比18.9%増の1億2,400万ト ンになると見込まれている。これは、前年度大雨などの異常気象により生産が落 ち込んだが、今年度は気象条件にも恵まれ大幅に生産が回復すると予想されるた めである。 トウモロコシ生産は米国および中国の2大生産国で世界の約6割を占めているが、 これら2大生産国での増産が全体の生産を押し上げると予想されている。 なお、これらの国々に続くEUおよびアルゼンチンでは、それぞれ前年度比11.4 %減の3,420万トン、25.1%減の1,450万トンに減少するとみられている。
98/99年度のトウモロコシ貿易量は、前年度比1.0%増の6,390万トンとなるも のの、アジア経済の低迷により低水準にとどまると予想されている。ここ5年間 の生産量に占める貿易量のシェアを見ても、94/95年度が12.7%であったが、98 /99年度は10.7%と2ポイント低下するとみられている。しかし、全飼料穀物の 貿易量に占めるトウモロコシのシェアは約7割となっており、中心的地位に変わ りはない。 なお、わが国のトウモロコシ輸入量は1,600万トン前後(飼料用のほか食用も 含む)で安定的に推移しており、世界貿易量の約4分の1を占め、そのほとんどを 米国に依存している。 一方、消費量は価格が比較的低水準で推移するとみられるものの、ほぼ前年度 並みの5億8,200万トンと見込まれている。
世界のトウモロコシ需給を大きく左右する米国の作付けが、現在進められてい る。 USDAが発表したトウモロコシ作付けの進ちょく状況によれば、5月9日現在の 上位17州(全作付面積の90%を占める)は55%で、5月に入ってから急速に作付 けが進んだことが明らかとなった。作付け状況を昨年の同時点と比較すると、3 ポイント低いものの、94〜98年の5年間の平均よりも3ポイント高い水準となって いる。
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