◇絵でみる需給動向◇
イギリス食肉家畜委員会(MLC)は先般、99年におけるEU域内の牛肉需給見通し を発表した。これによれば、99年の牛肉生産量は前年比0.4%減の773万7千トン と、 4 年連続の減少が見込まれている。これは、96年の牛海綿状脳症(BSE)問 題以降、牛肉消費が大きく落ち込んだため、牛肉過剰対策として実施された子牛 のと畜奨励金制度(Calf Processing Premium)および子牛の早期出荷奨励金制度 (Early Marketing Premium)による生産の抑制措置などのためとしている。99年 の生産量をBSE問題発生前の95年と比較すると5.4%の減少(44万5千トン減)と なる。
99年の国別の生産量を見ると、2大生産国であるフランス、ドイツでは前年に 比べてそれぞれ2.1%減の184万 5 千トン、2.5%減の144万 4 千トンと、EU全体 の減少率を上回るとみられている。一方、牛飼養頭数の増加が見られるアイルラ ンド、スペインではそれぞれ3.3%増の63万トン、2.7%増の60万トンと予想され るなど、加盟国間で状況は異なっている。また、BSE問題の中心となったイギリス では、わずかに増加し69万トンと見込まれるものの、BSE問題発生前の95年と比較 すると 3 分の2程度の水準とされている。
牛肉消費量は、BSE問題により96年は700万トンを割り込んだが、その後は回復 基調で推移している。99年は、前年比0.8%増の751万トンに回復するが、依然と してBSE問題発生前の95年の水準を下回るとみられている。これは、イタリアなど では順調な牛肉消費がみられるものの、ドイツなどでは需要が引き続き低迷する など加盟国間で格差がみられるためである。また、99年の消費量は、牛肉と競合 関係にある豚肉など他の食肉の価格動向が重要なポイントとされている。 99年の牛肉輸出量は、ロシア向け食料援助に牛肉15万トンが含まれることから、 前年比8.1%増の93万トン、輸入量は前年比5.3%増の40万トンと見込まれている。
牛肉の介入在庫は、96年 3 月のBSE問題に伴う需給ギャップにより急速に積み 上がり、97年11月にはピークの62万7千トン(枝肉ベース)に達した(左図参照)。 その後は、生産抑制と消費回復により枝肉卸売価格はおおむね順調に回復したこ とから、加工向けおよび輸出向けの放出が行われ、98年末には45万トンに減少す るとみられている。 99年の介入在庫量は、大量の買い入れが見込まれない一方、引き続き加工向け および輸出向けの放出が行われることから着実に減少するとみられている。さら に、EU委員会は昨年12月、食料不足が深刻化するロシアに対し食料援助を実施す ることを決定したが、援助物資の中には牛肉15万トンが含まれており、これは介 入在庫から充当されることとなっている。このような状況から、98年末に45万ト ンであった介入在庫は99年末には15万トンと3分の 1 の水準に減少するとみられ ている。
99年の牛肉需給見通しは、それぞれわずかではあるが生産の減少に対して消費 の回復が予想されている。これにより、96年に116.1%であった牛肉自給率は、99 年には昨年よりさらに1.2ポイント低下し104%と見込まれ、EUの牛肉需給バラン スはさらに改善が図られるものとみられる。 EUの牛肉の需給見通し(枝肉ベース) 注1:98年は見込値、99年は予測値 2:輸出入量には、生体牛を枝肉換算したものを含む 3:EU15カ国の合計 4:( )内は、対前年比
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