タイの鶏肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○98年タイの鶏肉輸出は、47%増の28万トン


EU向け鶏肉調製品が引き続き大幅増加

 タイブロイラー加工輸出業者協会は、98年の鶏肉の輸出量(速報値)を公表し
た。

 96年に前年比11.2%減の13万7千トンであった冷凍鶏肉の輸出量は、97年には
同10.5%増の15万1千トンとなり、さらに98年は全地域への輸出が大幅に増加し
たことにより、同46.1%増の22万1千トンとなった。また、半調理品を含む鶏肉
調製品は、96年が同28.2%増の 2 万 8 千トン、97年が同44.9%増の 4 万1千ト
ン、98年は同48.2%増の 6 万 1 千トンとなり、年々拡大している。特に、EU向
けは、95年に千 5 百トン足らずであった輸出量が、96年には同62.8%増の 2 千
5百トン、97年が前年の約3.4倍の 8 千 4 百トン、98年には同2.7倍の2万2千
6百トンとなり、95年に比べ実に約15倍にも拡大し、鶏肉輸出の拡大に大きく寄
与している。その結果、98年の鶏肉総輸出量は同46.6%増の28万2千トンとなり、
97年の同16.4%増に続き2年連続の増加となった。輸出金額では、冷凍鶏肉が同
57.2%増の172億バーツ(1バーツ=約3.2円)、鶏肉調製品が同82.2%増の90億
バーツとなり、調製品の付加価値を高めた高度加工化が一段と進んでいる。


レアル切り下げが及ぼす対日輸出の影響は軽微

 タイ業界は、99年1月にブラジル通貨レアルが変動相場制に移行したことで、
ブラジル産鶏肉の輸出競争力が高まるものとみているが、日本向け輸出に大きな
影響を及ぼすことにはならないと予測している。タイの鶏肉輸出業者によると、
ブラジルから日本に輸出されている鶏肉の主要なアイテムは、大別すると、サイ
ズドボンレスレッグ(SBL:重量別に仕分けされた骨なしもも肉)が約 7 割、グ
リラー(丸鳥)が約1〜2割、その他が約1割、また、中国から日本に輸出され
ている主要なアイテムは、SBLが約 3 割、もも肉角切り規格品およびももステー
キ肉が約4割、むね肉およびささみが約2割、その他が約1割とみている。同業者
は、この中でレアルの下落により割安となったブラジル産のSBLが、生産コストの
上昇で割高となっている中国産のSBLに影響し、輸出量が減少するのではないかと
みている。タイ産および米国産鶏肉については、競合するアイテムの輸出量が少
ないため、対日輸出の影響は軽微としている。一方、ブラジル産の輸入は、輸送
航海日数(約60日)が長いため日本において在庫リスクを負う恐れがあること、
大量発注にならざるを得ないこと、定期航路が確立されていないため物流経費が
割高になることなど条件的に不利な面はあるものの、ブラジル産は、一般的には
飼料に魚粉を使用していないため、臭いも少なく、かつ、国産と大きさが同程度
のため、日本国内の加工用および業務用としての需要が定着している。


中国元の切り下げが大きな脅威

 米ドルに対するバーツの為替相場が40バーツ程度であれば経営的に安定すると
している鶏肉加工業者は、36バーツ程度で推移している現在にあっても、好調な
冷凍鶏肉および鶏肉調製品の輸出により、利益を確保しているとみられる。一方、
同業者は、中国から鶏肉調製品の対日輸出は増加しているものの、割高な輸出価
格、レアル切り下げの影響および元の為替相場などから、タイとは対照的に輸出
が減少していく可能性があるとみている。先般、通貨元の切り下げ観測が新聞報
道され、中国政府がこれを強く否定した経緯があったが、タイ鶏肉業界では、依
然として、中国では輸出不振を打開するために元の切り下げの可能性が秘められ
ているとみている。好調なタイ鶏肉の輸出にとって、万一、元が切り下げられた
場合、各国の通貨が連動して下落し、経済混乱が再発することが最も大きな脅威
となっている。


99年の輸出目標は27万トン

 同協会は、今後の輸出が付加価値を高めた鶏肉調製品などに傾斜していくとみ
られることから、99年の輸出目標数量を、日本向けが98年の17万2千トンに対し、
14%減の14万8千 5 百トン、EU向けが同 7 万 7 千トンに対し4.6%増の 8 万1
千トン、その他が 4 万 5 百トン、合計では98年実績をやや下回る27万トンとし
ている。なお、この数量がレアル切り下げ以前に公表されたため、その影響につ
いては織り込まれていない。


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