◇絵でみる需給動向◇
98年の生乳生産者販売価格は、主要生産地域を襲った記録的な降雨や夏場の高 温などにより生乳生産が伸び悩んだ影響で、記録的水準まで高騰した。98年の平 均生乳生産者販売価格(グレードA(飲用規格乳)およびグレードB(加工用規 格乳)の加重平均)は、前年比15.2%高の15.39ドル/100ポンド(38.7円/kg: 1ドル=114円)となりネ過去最高であった96年を0.64ドル上回った。この背景に は、生乳生産の伸び悩みがもたらしたバターやチーズなど乳製品の価格上昇が挙 げられる。特に、その生産のために生乳生産の約 2 分の 1 が仕向けられている チーズの価格高騰が、生乳価格に大きな影響を与えている。 ◇図:平均生乳農家販売価格◇
しかし、98年6月以降一貫して上昇を続けていたチーズ卸売価格は、99年に入 り一転して急落した。99年1月のチェダーチーズ卸売価格(ウィスコンシン地区 のFOB価格)は、前年同月比12.4%高の162.4セント/ポンド(408円/kg)となっ たものの、前月と比較すると30.1セントの大幅な下落となった。これを週別に見 ると、ピークであった98年12月第3週の194.0セント/ポンド(488円/kg)から1 月最終週には128.8セント/ポンド(324円/kg)まで、わずか6週間で33.6%下 落したことになる。その後、取引数量は極めて少ないものの数少ない価格形成の 場として卸売価格に影響を与えているシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)のチ ェダーチーズ現物取引価格は 2 月第 1 週に反発したことなどから、チェダーチ ーズ卸売価格はほぼ下げ止まったものとみられている。 このチーズ価格暴落の要因としては、それまでチーズ価格が高水準で推移して いた中で、98年10月以降生乳生産が回復し原料乳の確保が容易になったことから、 チーズ生産が短期間に急拡大したことが挙げられる。98年7月以降前年同月を下 回って推移したチーズ生産量は、生乳生産の回復と期を同じくして増加に転じ、 12月には単月の生産量としては、初めて30万トンを突破し過去最高を記録した。 チーズ消費は引き続き好調であるものの、短期間に急増した生産を吸収できずに 需給バランスが一挙に崩れたものとみられている。 ◇図:チェダーチーズの価格動向◇ ◇図:チーズの生産量◇
チーズ価格下落の影響を受けて、グレードB生乳価格が低下し始めている。連 邦ミルク・マーケティング・オーダー(FMMO)制度の下でグレードA生乳の価格算 定基礎になっている基礎公式価格(BFP)も、ミネソタ、ウィスコンシン両州のグ レードB生乳価格などを基に算出されているため、前月に比べ1月には1.07ドル /100ポンド、 2 月には 4 ドル/100ポンド近く低下するとみられている。こう したことから、98年は高水準で推移した生乳の生産者販売価格も、今後は大幅な 下落が避けられない状況となっている。
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