EUの豚肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○99年の生産量はほぼ前年並みの見込み



繁殖用雌豚増加により今年前半まで肉豚供給は増加

 イギリス食肉家畜委員会(MLC)は今般、99年におけるEUの豚肉需給見通しを公
表した。これによれば、99年の生産量は過去4年間の最高となった98年とほぼ同
じ水準の約1,737万トン(枝肉ベース)となることが見込まれている。

 これは、繁殖用雌豚頭数がイギリス、イタリアを除き増加しており(98年8月
現在でEU全体の頭数は、前年に比べ3.8%増の1,319万7千頭)、今年前半まで肉
豚供給の増加が続くことが確実であるためとしている。各国別では、EU最大の豚
肉生産国であるドイツで1.8%増(266万頭)、第2位の生産国であるスペインで
15.5%増(247万 7 千頭)、フランスで2.3%増(148万 3 千頭)となっており、
EU最大の豚肉輸出国であるデンマークや、97年に豚コレラの深刻な影響を受けた
オランダなどでも増加している。しかし、今年後半以降は、現在の豚肉価格の低
迷に伴い、肉豚供給が下降に向かうとみられることから、99年通年の豚肉生産は
ほぼ前年並みと予想されている。

 なお、EUの豚肉自給率は、生産量が横ばいであるのに加え、消費量も0.3%の微
増(約1,599万トン)にとどまるとみられることから、108.6%になると予測され
ている。

EUの豚肉需給見通し
po-eu05.gif (4897 バイト)
 資料:MLC
 注1:枝肉ベース
  2:98年の数値は見込値、99年は予測値


上位 5 カ国のうち、ドイツ以外は増産

 EUの豚肉生産量の約 7 割を占める上位5カ国では、現在、繁殖用雌豚の積極的
なとう汰を行っているドイツを除き、増加が見込まれている。スペインおよびフ
ランスでは、豚肉消費が豚肉価格の低下と相まっておう盛であることが報告され
ている。デンマークでは、積極的なマーケッティング活動や業界再編などを通し
て、輸出先の多角化および輸出競争力の強化が図られている。オランダでは、依
然として豚コレラの反動もあり、増産が続くものとみられている。


豚価は今年後半以降、徐々に回復

 一方、EUの豚肉価格は、昨年11月で底を打った模様であるが、前述の今年前半
における豚肉生産の増加予想に加え、昨年9月から行われている民間在庫補助制
度(PSA:Private Storage Aids)からの豚肉の一部放出もあって、しばらくの間
低迷することが予測されている。

 しかし、今後、需給を引き締める幾つかの材料もある。11月に行われたEU豚肉
最大の輸出先であるロシア向けに限定した輸出補助金の大幅引き上げ(生鮮・冷
蔵の枝肉や骨付きバラ肉などの補助金を40ユーロ(約 5 千 3 百円:1ユーロ=
133円)/100kgから70ユーロ(約 9 千 3 百円)へ)により、同国向けの輸出が
再開されたことが報告されている。さらに、ロシア向けには今後、食糧援助物資
として10万トンの豚肉が PSAからの放出や市場からの購入により輸出される予定
である。また、MLCは、現在の豚肉価格低迷により、多くの加盟国において養豚農
家の経営意欲が減退してきており、今後、繁殖用雌豚頭数は減少するとみている。
アイルランドの98年12月現在の繁殖用雌豚頭数は、前年比2.6%減の19万 3 千頭
となり、ドイツやフランスでも依然として増加が見られるものの、その伸び率に
鈍化の兆しが見え始めていると伝えられている。その結果、今年後半以降の豚肉
需給バランスは改善に向かい、価格は徐々に回復するとみられる。


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