NZDB、組織改革案を発表


 ニュージーランド政府が、現在、法律に基づき農産物輸出の一元管理などを行
う「生産者ボード」の規制緩和を検討している中、ニュージーランド・デイリー
・ボード(NZDB)のジョン・ストーリー会長は、1月27日、同ボードの改革案を
発表した。

 今回発表された改革案は、@新組織体系の構築、A業界振興事業の見直し、B
新たな根拠法の策定の3つの事項を柱とする「スリーポイント・プラン」と称さ
れる。


現行組織の大幅な見直しを提案

 NZDBが自ら提唱した改革案の内容を具体的に挙げると、次の通りである。

 @新組織体系の構築

 輸出販売に特化した新たな組織に再構築する。組織運営やその透明性、また会
計責任などの観点からは、一般的な会社組織のように運営し、新たなビジネスの
開拓や販売機会に即応できるよう迅速な意思決定を可能とする組織体系を目指す。
また、新組織についても法律による後ろ盾を残しつつも、商業上、政策上は独立
性を高める。

 A業界新興事業の見直し

 現在、NZDBにより実施されている事業のうち、輸出に直接関連しない酪農乳業
界の振興を目的としたものについて見直しを行う。具体的には、国内での乳牛の
牛群検定、乳雄子牛の販売プロモーションなどすべての事業について見直した上
で、必要に応じ委託契約や別組織への移管を検討する。

 B新たな根拠法の策定

 輸出販売の一元化など、従来のNZDBに対する法律上の特典を担保するための法
的根拠として、新デイリー・ボード法を策定するよう政府に働きかける。法的な
後ろ楯を得ることによって、NZに割当てられた既存のマーケット・アクセスを
維持・消化するとともに、税制や商法上のメリットの温存を図る。


組織効率の向上や市場動向を反映した生乳生産を目指す

 ストーリー会長は、今回の発表の中で「ボードの業績を向上し、酪農家への支
払乳価を改善することが組織改革の原点」としている。これまでは、組織効率の
悪さから利益を取りこぼしたり、国際需給などNZ産乳製品の販売状況が、生乳生
産現場に十分に反映されていないことから、乳製品の生産効率や需要とは関係な
く、生乳生産がひたすら拡大する方向にあったと反省し、生乳生産から輸出販売
までの効率化と市場動向を反映した生乳生産の必要性を指摘している。こうした
ことから、具体的な改革は生乳の生産構造にまで波及するものと予想される。

政府は業界の自主判断に委ねる構え

 一方、NZDBのスリーポイント・プランに対する政府側の立場は、バーチ大蔵大
臣が「重要なことは、酪農家に、より高い利益をもたらすことである」と表明し
たように、基本的には理解を示しながらも、今後も米国との自由貿易協定の道を
模索するとした上で、規制緩和は政府が強制するものではなく、酪農乳業界自身
が決断すべき問題との姿勢を示している。

 これは、他国の市場開放で生じる恩恵と、ボードの一元輸出による利益は、両
立しないとの見解を示すものであり、この点に関しては、NZDBのスリーポイント・
プランの中にも、一元輸出に関する法的根拠を取り除くことによって、米国との
自由貿易協定など、国際市場へのアクセスが大きく改善される場合に限り、規制
緩和を再検討すると盛り込まれている。


最終決定には米国の出方がカギ

 今後、NZDBをめぐる改革議論は、スリーポイント・プランを基軸として最終局
面に入ると予想されるが、米国などの出方次第では、広大な市場へのアクセスか、
一元輸出の堅持かの選択を迫られる場面も想定される。


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