豪州、バター消費拡大に朗報


展延性の優れたバターを生み出す飼料を開発

 豪州連邦産業科学研究機構(CSIRO)は、冷蔵庫から取り出した直後でもパンに
伸ばせるほど柔らかいバターを生み出す搾乳牛用飼料の開発に成功したと発表し
た。

 CSIROの発表によると、この飼料は、キャノーラ(セイヨウアブラナ)種子と大
豆ミールを特別にブレンドしたものから構成され、これをタンパクによりコーテ
ィングすることによって、牛の第1胃内での飽和脂肪酸への分解を抑制する。こ
の結果、生乳乳脂肪中の飽和脂肪酸の割合を低下させる一方で、不飽和脂肪酸の
割合を高めるというものである。

 通常のバターでは、飽和脂肪酸の割合が多いことによる融点の高さが、ソフト・
マーガリンなどに比べて使い勝手の劣る要因となっているものの、今回の飼料を
もとに製造したバターは、摂氏5℃で冷蔵庫保管後に使用しても、本来の風味を
失うことなしに、従来のバターに比べ2倍の展延性があり、ソフト・マーガリン
に近い感触を持つとしている。


不飽和脂肪酸の増加が健康面にも利点

 今回開発された飼料は、乳脂肪中の飽和脂肪酸の割合を低下させる一方で、一
価不飽和脂肪酸や多価不飽和脂肪酸の割合を高めることから、CSIROでは健康面へ
の利益も訴えている。

 CSIROによる臨床実験では、今回開発の飼料を給餌された乳牛由来の牛乳、バタ
ー、アイスクリームなどを摂取した人は、血中の悪玉コレステロール(LDL)の低
下が認められたとしている。

 開発に当たったグラティ博士は、特にバターに関して「独特の風味を壊すこと
なく、展延性と健康面での利点という 20 つの特色を消費者に供することに成功
した」と語っている。


バターの消費拡大の後押しに期待

 今回開発された飼料は、既に豪州企業により商業化されており、豪州やニュー
ジーランドの乳業メーカーなどが乳製品製造への応用に強い関心を示していると
されるが、牛乳乳製品として商品化されるまでは、コスト増への対処など課題も
多いと思われる。

 しかしながら、健康志向を背景とした消費者の脂肪への忌避傾向は、長期的な
バターの消費減少の大きな要因とみられるだけに、昨年10月から豪州酪農庁(AD
C)を通じて250万豪ドル(約 1 億 9 千万円:1豪ドル=75円)を投じたバター
の消費拡大キャンペーンを実施する豪州の酪農乳業界にとって、今回の研究開発
はタイムリーな朗報と言えよう。


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