豪州・NZ、遺伝子組み換え食品の表示を義務付け


疑わしいものも表示を義務化

 98年12月17日、豪州・ニュージーランド食品基準会議(ANZFSC)は、一部の遺
伝子組み換え食品に対する表示の義務付けを可決した。

 豪州連邦政府、州政府およびニュージーランドの保健担当大臣によって構成さ
れるANZFSCによって今回可決された事項は、@製造業者が遺伝子組み換え食品を
原材料として使用したことを確認できる場合、A製造業者が原材料の中に遺伝子
組み換え食品が含まれているか不明な場合、この2つのケースについて、遺伝子
組み換え食品である、あるいは、その可能性がある旨の表示を義務付けるとする
もので、今年から施行されることになった。

 一方、製造業者が原材料の中に遺伝子組み換え食品を使用していないことを確
認できるケースでは、遺伝子組み換え食品を使用していない旨を表示できるもの
の、その義務は負わない。


懸案は従来食品と同一成分組成の遺伝子組み換え食品の取扱い

 今回争点となったのは、遺伝子組み換え食品としての表示義務対象が、従来の
食品と成分組成が変わらなくても、遺伝子組み換えが行われている食品にまで拡
大された点である。具体例を挙げると、遺伝子組み換えによって雑草や害虫に耐
性のある遺伝子を組み込まれた大豆から精製した油やタンパク質などで、これら
を原材料として使用した食品は遺伝子組み換え食品として表示しなければならな
いとしている。しかし、この点に関しては、ANZFSCの実務機関である豪州・ニュ
ージーランド食品基準局(ANZFA)が今後さらに検討を重ねた後、表示義務対象食
品の定義付けを行うこととなっている。

 同じ遺伝子組み換え食品でも、従来の食品と成分組成が異なるものや倫理的に
問題のある食品に関しては、既に昨年 8月の会議で、本年からの表示の義務付け
が決定されたが、今回の対象となった食品は当時の会議で結論が先送りされてい
た。


業界と消費者、立場により相反する受け止め方

 今回の決定に対して、食品製造業者の代表団体である豪州食品協議会(AFC)で
は、国際的な基準よりもかなり厳格なものであるとした上で、「遺伝子組み換え
食品使用の可能性あり」などとする表示は混乱をもたらすだけで、消費者にとっ
ても意味がなく、無用なコスト負担を課すだけと非難している。

 一方、豪州消費者協会では、同協会の調査で8割以上の消費者が表示を希望し
ていることからみても、消費者の知る権利を守るものだとして、今回の決定を歓
迎している。

 ANZFAは、遺伝子組み換え食品の表示問題に関して、これまでは、組み換えによ
って組成が異なり人体に影響を与える可能性があるものなどに限り表示するなど、
どちらかといえば米国基準に近い方針を示していただけに、今回の決定に意外感
を抱く関係者も多い。


国際的な整合性が課題

 今回、表示の対象となった遺伝子組み換え食品に関しては、わが国でも表示義
務化をめぐる議論が続いている分野であるが、今回の決定は世界的にみてもかな
り踏み込んだものとなっている。

 豪州での遺伝子組み換え農産物の生産は、現在のところ綿花など一部の品目に
制限されており、米国の生産状況とは大きく異なることなども今回の決定の背景
となったとみられる。今後、国際的な整合性をめぐっては、輸出国との間で議論
が生じる可能性もありそうである。


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