乳業界、ニュージーランド産乳製品の輸入を制限(タイ)


ニュージーランドへの抗議が目的

 タイ乳製品加工業者は、ニュージーランド(NZ)から輸入する脱脂粉乳の数量
を、99年 1 月から制限することにした。

 業者を代表する全国ミルク協議会会長によると、これは、タイの加糖練乳など
の乳製品をボイコットしているNZに抗議するための措置としている。既に、タイ
乳製品加工業者は、この影響で数億バーツ( 1 バーツ=約3.2円)の損失を被っ
ているという。NZは、タイが乳製品の原材料に口蹄疫汚染地域で生産されたもの
を使用しているとして、安全なNZ産の粉乳などを使用すべきと指摘している。

 タイ乳製品加工業者は、以前にも乳製品の主な輸出市場であったブルネイおよ
びインドネシアをマレーシアやベトナムに奪われた苦い経験を持っているだけに、
本件に強い警戒心を示している。このため、同会長は、在タイNZ大使などとの協
議の結果、NZ農業省検査官が、タイの乳製品輸出工場を検査することにより解決
策を図ることとした。なお、検査の対象となる乳製品製造工場は、アラスカブラ
ンドで輸出しているタイ・フォーモスト・フライズ社ほか 1 社となっている。


乳製品原材料の代替輸入国は米国、ヨーロッパ諸国

 しかし、タイの乳業界は、NZによるタイ産乳製品のボイコットの中止もしくは
満足する回答を得られるよう、NZからの乳製品の輸入を制限し、その使用数量を
減らすとしている。また、同時に、アイスクリーム加工業者および消費者団体に
対しても、NZ産乳製品の使用量を最低限にとどめるよう協力を求めるとしている。

 同業界は、昨年、粉乳の国際価格がかなり下落したため、NZ以外から容易に乳
製品の原材料の手当ができると見込んでおり、代替輸入国として米国、ヨーロッ
パ諸国などを挙げている。


自由貿易を主張しながら他国産を排除する姿勢を批判

 一方、タイは、鶏肉調製品の輸出においても、豪州の実質的な輸入禁止措置に
より、豪州との間で問題が生じている。このように、自国にとって不利益となる
他国からの農産物の輸入を排除する動きに対し、タイは、自由貿易を主張する農
産物輸出国にあるまじき行為として抗議を行ったとしている。

 97年のNZからの粉乳など乳製品輸入額は約50億バーツ(約160億円)で、全乳製
品輸入額の約4割を占めている。その一方で、タイは、加糖練乳などを米国、豪
州、カナダをはじめ、アジア、環太平洋の数ヵ国に輸出している。


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