合成牛成長ホルモン(rBST)の販売承認申請を却下(カナダ)


米国は93年にrBSTを認可、現在の普及率は約 2 割

 牛成長ホルモン(BST)は、牛の脳下垂体で自然に生産されるたんぱく質であり、
子牛の成長を促進するとともに、搾乳牛の生乳生産量を増加させる機能を持って
いる。一方、合成牛成長ホルモン(rBST)は、バイオテクノロジーを用いて生産
される動物用医薬品であり、これを搾乳牛に投与すると、生乳生産量が10〜15%
増加することが分かっている。また、牛乳中のrBSTとBSTを識別する検査方法がな
いため、実質的に、rBSTをBSTと区別することはできない。

 米国では、保健社会福祉省(HHS)食品医薬品局(FDA)が93年に同製品を認可
し、94年からその使用が認められている。この結果、現在米国では、約2割の乳
用牛に対してrBSTが投与されているものとみられている。


カナダは、家畜の健康に対するrBSTの影響を懸念

 カナダ厚生省は、1月14日、生乳生産を増加させるrBSTのカナダ国内での販売
を承認しない意向であると発表した。

 カナダでは、88年および90年に、それぞれ別々の会社から同製品の承認申請が
なされ、家畜および人間の安全性に対するrBSTの影響について、9年以上に及ぶ
総合的な検討がなされてきた。このような検討に加え、2つの独立した専門家委
員会が98年春に設置され、科学的データや牛成長ホルモンの使用に係る広範な問
題を検討していた。

 医療関係者により構成された委員会は、rBSTの人の安全性に対する影響につい
て検討を行った。この結果、rBSTを投与された家畜から生産された製品を摂取し
ても、人の安全性に対するリスクはほとんどないことが分かった。

 また、獣医関係者により構成されたもう1つの委員会は、家畜の健康に対する
rBSTの影響について検討を行った。同委員会によれば、rBSTは乳房炎を最大25%、
不妊を18%、は行を最大50%、それぞれ増加させる危険性があるとしている。こ
のようなリスクの増加に加え、全体的な体調の衰えにより、廃用となるリスクを
20〜25%増加させるとしている。

 こうした家畜の健康に対する影響を踏まえ、カナダ厚生省は、rBSTは乳用牛の
安全性確保にとって受け入れ難い脅威であるとして、最終的な決定は6月のコー
デックス会議の後になるものの、実質的に、販売の承認申請を却下する意向を表
明した。


米国にも波紋を広げるカナダの意向

 このような発表を受けて、同製品を製造・販売するモンサント社は、判断の基
礎となった報告書は間違いだらけだと非難するとともに、引き続き同製品の承認
を求めていくとしている。また、同製品の認可に批判的だった米国の消費者団体
や環境保護団体は、カナダのこうした意向を踏まえ、連邦政府に対して調査結果
の見直しを求めている。さらに、バーモント州選出の上院議員であるジム・ジェ
フォーズ氏とパトリック・リーヒー氏の2 人は、HHSに対して、本問題について
調査を行うよう要請している。



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