◇絵でみる需給動向◇
98年のEU15カ国の牛肉生産量は、前年比3.8%減の757万 4 千トン(枝肉ベース、 暫定値)となった。牛肉生産量は、91年にピークの873万トン(12カ国)を記録 して以来、減少傾向で推移し、 7 年間(91年〜98年)で100万トン以上減少した。 このように牛肉生産が漸減している背景としては、乳用牛を中心に飼養頭数が 減少していることや、牛海綿状脳症(BSE)問題による牛肉生産の抑制措置によ るものと考えられる。 98年の牛肉生産の内訳を見ると、成牛肉が前年比4.0%減の681万 8 千トン、子 牛肉は1.9%減の75万 6 千トンとなった。EUでは、成牛肉が全体の 9 割、子牛肉 が 1 割を占めており、他の生産国に比べ子牛肉の割合が高くなっている。 98年のEUの牛肉生産量(枝肉ベース) 資料:BER 注 1 :数値は暫定値 2 :カッコ内は前年比
EU15カ国の中で牛肉生産量が100万トンを超える国は、フランス、ドイツ、イ タリアの3カ国である。これら 3 大牛肉生産国で全体の55%を占めており、98年 はこれら 3 大国で3〜 5 %減少したことが全体の生産減に大きく影響している。 主要生産国で軒並み減少している中で、アイルランドが3.0%増加していることは 注目される。 牛肉生産に占める子牛肉の割合は国によって状況が異なり、オランダ(36.9%)、 フランス(15.3%)、イタリア(13.4%)で高く、イギリス、アイルランドで低 くなっている。
介入在庫量を見ると、96年3月に牛海綿状脳症(BSE)問題が発生して以来、 増加の一途をたどり、97年11月には62万 7 千トン(枝肉ベース)に達した。しか し、それ以降は牛肉消費の回復とともに、介入在庫から加工仕向けおよび輸出向 けの放出が行われ、介入在庫は着実に減少してきた。98年末時点の介入在庫量は 50万 4 千トンと、97年末よりも10万トン以上減少した。(左図参照) 介入在庫量を国別に見ると、ドイツが全体の35.3%を占め、次いでイギリスが 18.9%、フランスが16.8%、アイルランドが16.2%と、これら上位 4 カ国で全体 の 9 割近くを占めている。 99年はロシア向け食糧援助の実施が決定されており、牛肉15万トンが介入在庫 から充当されることから、介入在庫量はさらに減少に向かうものと期待されてい る。 主要国別の介入在庫量(98年12月末現在) 資料:BER
EU首脳会議は3月26日、共通農業政策(CAP)改革に合意した(詳細はトピッ クス参照)。牛肉分野に関しては、 3 月11日の農相理事会で価格支持水準の引き 下げ率がEU委員会で提案された30%から20%に圧縮され、首脳会議でも「20%」 削減案が合意された。これにより、EU委員会が目指した価格支持水準の大幅引き 下げによる、域内の牛肉消費の増加と補助金なし牛肉輸出というシナリオの修正 が必要になることも予想される。
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