米国の鶏肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○回復の目途の立たないロシア向け輸出


98年輸出量は前年水準を維持

 米農務省(USDA)によると、98年のブロイラー輸出量(可食処理ベース)は、
前年比0.2%増の212万トンとほぼ前年並みとなった。米国のブロイラー輸出は、
インテグレーションによる効率的生産を背景とした価格競争力を武器に、90年代
に入り前年比10%を超える高い伸びを続けてきたが、近年その伸びが急激に鈍化
している。

 98年の輸出量を輸出先別に見ると、最大の輸出先であるロシア向けは、同国の
経済状況の悪化により前年比27.3%減の67万9千トンと大幅に落ち込んだ。これ
とは対照的に、ロシア向け輸出不振による輸出価格の低下などにより、ロシア以
外の諸国向けの輸出はかなり大きく増加した。第 2 の輸出先である香港向けや主
要輸出先であるメキシコおよび日本向けは前年比10%を超える伸びを記録してい
る。また、東欧や中米向けも増加しており、これらロシア以外の諸国向けの輸出
増加がロシア向け輸出の減少を補っている。

◇図:輸出先別ブロイラー輸出量◇


ロシア向け輸出、依然低水準

 ロシア向けの輸出量を月別に見ると、ロシアにおいて経済危機が深刻化し通貨
ルーブルが切り下げられた翌月の98年 9 月から、輸出量は急激に落ち込み、99年
に入っても前年同月の 3 割程度の低い水準となっている。

 一方、ロシアへの鶏肉の援助輸出については、USDAが 2 月、援助品目の 1 つ
に5万トンの鶏肉を加えるとともに、PL480号タイトルT(低利融資による輸出プ
ログラム)を活用した民間部門の鶏肉輸出を検討していることを明らかにした。
しかし、PL480号タイトルTによる民間部門の鶏肉輸出については、@ロシア経済
の回復が先行き不透明であること、A米国ブロイラー業界とUSDAの間で具体的な
事業内容についての調整が難航していることなどから、早期の実施は困難とみら
れている。

◇図:ブロイラーのロシア向け輸出量◇


米・ロシア養鶏業界、ロシアでの現地生産で合意

 こうした中、米国およびロシア両国の養鶏業界は 3 月末、立ち上がったばかり
のロシア養鶏産業の発展を支援することを目的とした合弁事業について合意に達
した。米国養鶏業界の輸出振興団体であるアメリカ家禽鶏卵輸出協会(USAPEEC)
によると、ロシアでの合弁による鶏肉生産は、インテグレーションによるブロイ
ラー生産のコンセプトをロシア養鶏業界に対し提供するための実証展示事業であ
るとしている。米国養鶏業界にとっては、ロシア向け輸出の回復の目途が立たな
い中で、今回の合弁事業はロシアでの現地生産開始の足がかりになるものでもあ
り、今後の展開が注目される。

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