豪州の牛乳・乳製品の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○生産拡大により収益性が向上


上半期の生乳生産は前年同期比5.1%増

 豪州酪農庁(ADC)によると、98/99年度上半期(98年 7 月〜98年12月)の生
乳生産量は前年度を5.1%上回る58億4千万リットルとなっており、今後、気象の
大きな変動がない限り、97/98年度の最高記録を確実に更新する勢いを見せてい
る。

 州別に見ると、生乳生産全体の65%前後を占めるビクトリア(VIC)州は、前
年同期比5.5%増の38億1千万リットルとなり、続くニューサウスウェールズ(N
SW)州、クインズランド(QLD)州についても、それぞれ前年同期に比べ2.2%、
2.1%の増加を示した。これら 3 州を合わせると、豪州全体の生乳生産のうち約
85%を占めることとなる。


収益性の改善が見込まれる酪農経営

 こうした中、 3 月に開催された豪州農業観測会議において、98/99年度(98年
 7 月〜99年 6 月)の酪農経営の見通しが発表された。

 これによると、豪州平均では、総現金収入(Total cash receipts)が総現金支出
(Total cash costs)を上回ることから、その差額である農場現金収支(Farm cash
income)は、前年度を9.0%上回ると見込まれている。しかし、それに在庫増減額
を加え、家族労働費、減価償却費などを差し引いた 1 経営体当たりの最終的な農
場経営損益(Farm business profit)は、200豪ドル(約15,600円: 1 豪ドル=78円)
の赤字になるとみられている。一方、平均的な肉用牛経営と比較すると、その赤
字額は20分の1 程度となっており、肉用牛に比べ経営状態がかなり良好であるこ
とがうかがえる。


ビクトリア州、生産増が加工乳価の低下を相殺

 州別の収益性を見ると、生乳生産のうち加工原料乳の割合が約 9 割を占めるV
IC州では、98/99年度は生乳生産の増加により加工向け乳価の低下を相殺し、農
場現金収支が改善されるとみられている。これに対し、飲用向け生産が主体のN
SW州については、同年度における生乳生産の増加が飲用乳価の低下を相殺するま
でには至らないとされていることから、農場現金収支は前年に比べ約 6 %低下す
るとみられている。しかし、農場経営損益を見ると、NSWは黒字となっているも
ののVICは赤字が続いている。

 この他、ウェスタンオーストラリア(WA)州が全州の中で最も高い農場経営
損益を挙げている。


規制緩和による農場現金収支の影響を想定

 近年、豪州では各州において、飲用乳に対する規制緩和の動きが活発化してい
る。現状では、行政的に設定されている飲用乳価と、メーカーと生産者との相対
取引で決まる加工向け乳価には約2倍の格差があることから、農場現金収支の面
から見ると飲用向け生産を主体とするNSW州などは、加工向けを主体とするVIC
州などに比べ大きなメリットを享受している。このため、今後の飲用乳をめぐる
規制緩和の進行状況いかんでは、各州の酪農経営の状況に大きな変化が生じるこ
とも予想される。

豪州酪農の経営状況
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 資料:ABARE
  注:97/98年度は速報値、98/99年度は予測値

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