◇絵でみる需給動向◇
ニュージーランドでは、98年に入り生乳生産の減少が顕在化しており、98/99 年度(98年 6 月〜99年 5 月)は10数年ぶりに減少に転じることが見込まれている。 98/99年度上半期(98年 6 〜11月)の生乳生産量は乳固形分換算で41万 8 千トン (NZDB/Agra Europe)と、前年同期を 6 %も下回ることとなった。これは、98 年に入って干ばつの被害が深刻化し、牧草の生育状態が悪化したことによる経産 牛 1 頭当たりの乳量減が大きく影響したものとみられる。 特に、ニュージーランドの春季に当たる9〜11月は、生乳生産のピークに当たり、 年間 4 割以上を占めているが、干ばつが搾乳シーズンを直撃することとなった。 (左図参照) このように、ニュージーランドの酪農は、放牧主体であるため天候による牧草 の生育状況により大きく左右される。 90年代に入ってからの同国の生乳生産は、乳製品の国際市況がほぼ順調に推移 してきたことから一貫して拡大してきたが、ここにきて一転して減少することと なった。 ◇図:生乳生産量(乳固形分ベース)の推移◇
一方、99年は、引き続き経産牛飼養頭数の増加が見込まれ、 1 月下旬から国内 各地で降雨に恵まれるなど天候が次第に回復していることが伝えられている。し かし、ニュージーランド・デイリー・ボード(NZDB)では、これらの要素が上半 期分の生産減を補うまでには至らないとみている。このため98/99年度の生乳生 産量(乳固形分ベース)は、昨年11月に発表された見通しから1万 6 千トン下方 修正され、前年度をおよそ 2 %下回る87万 6 千トンと見込まれている。
こうした生乳生産の減少を受けて、酪農家の収入減が見込まれている。最も主 要な生乳生産地域である北島のワイカトでは、生乳生産が前年水準を30%近く下 回る地域があるとも言われており、今後、同地域の経済にも少なからぬ影響を及 ぼすことが予想されている。 ノースランドデイリー酪農協によると、98/99年度の最終乳価は乳固形分 1kg 当たり15NZセント(約10円: 1 NZドル=66円)の低下が見込まれており、この 結果、 1 酪農家当たり年間約 1 万NZドル(66万円)の収入減を被るとみられて いる。
生産される生乳のうち約95%が加工用に仕向けられ、その大半が乳製品として 輸出されることから、完全な輸出依存型であるニュージーランドの酪農は、最近 の乳製品の国際市況が軟化傾向にある中でも、低コスト生産を武器に輸出シェア を徐々に伸ばしてきた。しかし、国際市況好転の兆しが見られない状況下での生 産減は、同業界にとって大きな痛手になると思われる。そうした中、NZDBは、 2 %程度の生産の減少見込みに対し酪農・乳業への大きな影響はないとしている。 しかし、一方で、今後はブランド製品など付加価値の高い製品へ優先的に生乳を 仕向けるという意向を明らかにしている。 ニュージーランド同様放牧主体の酪農を行う豪州では、記録的な生乳生産が見 込まれる中で、世界の乳製品貿易に占めるウェートを拡大しつつあるニュージー ランドが、どこまでそのシェアを維持・拡大できるか注目される。
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