米国の牛乳・乳製品の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○生乳農家販売価格の急落を受けて、酪農家に対し直接支払いを実施


生乳農家販売価格が急落

 米農務省(USDA)によると、3月の生乳農家販売価格(飲用規格乳(グレー
ドA)および加工用規格乳(グレードB)の加重平均)は、前年同月比4.2%高の
15ドル/100ポンド(約40円/kg: 1 ドル=121円)となった。辛うじて前年水準
を上回っているものの、ピークであった98年12月と比較すると、わずか 3 ヵ月で
100ポンド当たり3ドル( 1kg当たり8円)も低下したことになる(左図参照)。


BFP導入以来、過去最大の大幅な下落

 このような生乳農家販売価格の急落は、@99年 1 月以降のチーズ価格の暴落に
伴い加工用規格乳価が低下したこと、A全米の生乳生産の約 7 割が対象となって
いる連邦ミルク・マーケティング・オーダー(FMMO)制度において、特定地域の
加工用規格乳価などを基に飲用規格乳価を定めているため、@に伴い飲用規格乳
価も低下したことが要因となっている(チーズ価格急落の詳細については、本紙
99年 3 月号の同欄を参照)。

 FMMO制度において、用途別乳価算定の基となる基礎公式価格(BFP)を見ると、
12月をピークに下落に転じ、 2 月には前月から 4 ドル安の10.27ドル/100ポンド
(27.4円/kg)に急落した。これは、BFPの 1 ヵ月の下落幅としては、95年 5 月
にBFPが導入されて以来、過去最大で、わずか1ヵ月の間に36.9%下落したことに
なる。

◇図:BFPと主要乳製品の卸売価格の推移◇


USDA、家族経営規模の酪農家に対し直接支払いを実施

 こうした中、USDAは 3 月 8 日、BFPの記録的な急落に対処するため、酪農家
に対し 2 億ドル(約242億円)の直接支払いを行うと発表した。これは、昨年成
立した99年度一括歳出法案に、59億ドル(約 7 千1 百億円)に及ぶ農家緊急支援
対策の 1 つとして盛り込まれていたものである。しかし、法案成立後、気象要因
などによる生乳生産の伸び悩みなどから、生乳農家販売価格は記録的な高水準で
推移したため、USDAは、酪農家に対する直接支払いの実施方法や実施時期など
について、その結論を先送りしていた。

 本事業は家族経営規模の経営体を対象としており、これは、経産牛飼養頭数が
約150頭程度の水準に相当する。今回の直接支払いは、酪農家の98年または97年の
いずれか高い方の生乳生産量のうち、260万ポンド(約 1 千 2 百トン)を上限と
して実施される。最終的な支払単価は、酪農家の申込み状況によって決定される
こととなるが、USDAによれば、100ポンド当たりで18〜20セント(0.48〜0.53円
/kg)、酪農家一戸当たりの直接支払いの限度額では 5 千ドル(約60万円)程度
になると見込まれている。なお、今回の直接支払いに係る申込みは、 4 月12日か
ら 5 月21日まで行われることとなっている。

元のページに戻る