EUの豚肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○98年12月期の総飼養頭数、依然として増加



前年同期に比べ5.5%増

 欧州統計局の98年12月期における豚飼養頭数調査によると、EU15カ国の豚総飼
養頭数は、各国で増減があるもののこれまでの繁殖用雌豚頭数の増加から、主に
肥育豚頭数が増加したため、前年同期に比べ5.5%増の約 1 億2,550万頭となった。

 EUの豚総飼養頭数は、96年12月期の調査以降増加が続いている。この背景には、
96年 3 月に起こった牛海綿状脳症(BSE)問題による代替需要や、97年 2 月以降、
EUの主要生体豚および豚肉輸出国であるオランダなどで発生した豚コレラなどに
より、豚価が97年上半期まで好調に推移したことがある。この結果、域内養豚農
家の増頭意欲を刺激することとなった。イギリス食肉家畜委員会(MLC)は、し
ばらくの間この影響が続くため、98年10月から99年9月までの15カ国の豚と畜頭数
は、前年比6.2%増の約 2 億1,100万頭になると予想している。

98年12月期のEU豚飼養頭数
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 資料:欧州統計局/MLC「European Market Survey」


上位 5 カ国の頭数、軒並み増

 EUの豚総飼養頭数の7割を占める上位5カ国の頭数は、軒並み増加となった。
EU最大の豚肉生産国であるドイツでは、前年同期に比べ6.0%増の約2,630万頭、
第2位の生産国であるスペインは、98年も引き続き豚コレラの発生があったもの
の、安価な飼料や旺盛な国内消費により、11.5%増の約2,172万頭と目立った伸び
となった。また、フランスでは国内消費や生体豚輸出の好調が報告されている。
EU最大の豚肉輸出国デンマークは、ドイツなどへの生体豚輸出が好調であったこ
とや輸出先の多角化などが図られた結果、98年の豚肉輸出量が97年を上回ったと
伝えられている。

 なお、98年 9 月から施行された「豚生産の再編法」により、飼養頭数の削減が
行われていたオランダは、98年 8 月期の飼養頭数調査に比べると減少したものの、
豚コレラの深刻な被害を受けた97年時と比べると依然として大幅な増加となって
いる。しかし、同国では 2 月に、裁判所が一部生産者団体の異議申し立てを受け
入れ、「豚生産の再編法」の廃止にまで言及する裁定を下したことから、現在、
同法に基づく頭数削減の実施が一時中断されている。


繁殖雌豚は増加も、今後は減少の兆し

 一方、繁殖用雌豚頭数は、全体では前年同月に比べ1.1%増の約1,306万頭と引
き続き増加したものの、イギリスやスウェーデンなど半数近くの国で減少が見ら
れる。このうち、未経産豚頭数は各国でおおむね減少しており、2.7%減の約305
万頭となった。今後、域内の肉豚供給は今年の後半以降、徐々に減少するとみら
れる。これは、これまで1年以上にわたる豚肉生産の増加や、98年8月以降、EU
最大の豚肉輸出先であるロシアでの経済危機の影響などにより、現在域内の豚価
が低迷していることから、養豚農家の経営意欲が減退しているためと考えられる。

 なお、MLCは、99年の域内豚肉生産量は最終的にほぼ前年並みの約1,737万トン
(枝肉ベース)になると予測している。また、豚肉価格についても、3月から始
まったロシア向けの食糧援助で10万トンの豚肉輸出の効果などと併せて、今年後
半以降徐々に回復すると予測している。

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