EU委員会、デンマークの豚と畜業者合併を承認(EU)


EU最大の豚と畜業者が誕生

 EU委員会は3月9日、デンマーク最大の豚と畜業者であるデニッシュ・クラウ
ン(Danish Crown)と第 2 位のベストジュスク・スローテリア(Vestjyske Slagte
rier)の合併(いずれも協同組合、合併後の組合名はデニッシュ・クラウン)を承
認した。これにより、EU最大の豚と畜業者が誕生することになった。この大規模
なと畜業者の合併は98年 9 月に公表され、その後EUの「域内の企業合併に係る管
理規則」(EC No.1310/97:97年 6 月30日制定)に基づき、EU委員会に対して
承認申請が行われていた。EU委員会は、 1 国内の企業合併が近隣諸国に影響を及
ぼすとみられる場合、これを審査することになっている。なお、両組合は、97年
のEUにおける豚と畜業者ランキングで最大(デニッシュ・クラウン)および第3
位(ベストジュスク・スローテリア)となっている。


EU委、消費者などに不利益をもたらさぬよう条件を提示

 EU委員会はこの申請を受け98年11月から、両組合の合併後、デンマークの豚と
畜業が適正な市場競争を維持できるか調査を実施した。調査対象は、合併に伴う
豚と畜業のほか生肉流通および副生物取引にまで及んだ。この調査の結果、合併
による市場の寡占化が、適正な市場競争を阻害し、消費者および同業者に対し不
利益をもたらす恐れがあるとの結論に達した。このため、同委員会は、合併の承
認に当たり両組合に対し次の通り調査結果およびこれに基づく改善条件を提示し
た。

 1  豚と畜業

 [調査結果]

 現在、生産者は組合に対し、一定期間豚の出荷義務を負っており、出荷先の選
択が制限されているが、両組合の合併後(年間のと畜頭数は同国全体の76%(約
1千6百万頭))は、さらにこれが強まることから、ドイツをはじめ近隣諸国への
出荷が一段と制限されると予想される。

 [改善条件]
 
  組合員である豚生産者は、 6 カ月前の通知により 1 週間当たりの出荷頭数の15
%まで他のと畜業者に出荷できる。また、組合を脱会する場合の事前通知期限を
12カ月に短縮(現行は12〜24カ月)する。

 2  豚肉の流通

 [調査結果]

 スーパーマーケットを通じたデンマーク国内における豚肉販売量のシェアは現
在、両組合で半分近くのシェアを占めているが、両組合の合併後は、第 3 位のシ
ュテフ・フベルク(Steff Houberug:協同組合)を加えると全体の70%を占める
ことになる。また、一部の販売ルートは大手と畜業者による独占的支配下にあり、
同国ではと畜業者間で豚の仕入および処理コストに大差がないことから、合併後
は、と畜業者間で市場を反映した適正な価格決定が一層困難な状況になるとみら
れる。

  [改善条件]

 両組合などの上部団体であるデンマーク豚肉輸出機構連合 (Danske Slaghterier:
DS)による週間相場価格の情報提供を廃止する。また、EU最大の豚肉輸出国で
ある同国では、輸出価格が国内市場に大きな影響を及ぼすことから、デニッシュ
・クラウンと他の2組合(シュテフ・フベルクおよびティカン)は、豚肉輸出会社
(ESS Food)の共同経営の解消に向けて協議する(注)。

(注)共同経営解消後のESS Foodの経営は、合併後の新組合デニッシュ・クラウ
  ンが引き継ぐ予定であるとされている。

3   副生物の取引

 [調査結果]

 両組合の支配下にあるDaka社は現在、全副生物取引量の80%を占めており、今
後、小規模と畜業者がDaka社から差別を受ける可能性がある。

 [改善条件]

 両組合によるDaka社支配を中止する。


デンマーク、EUで最も豚と畜業の再編が進む

 なお、デンマークの豚と畜業は、EUで最も再編が進んでいる。同国における豚
と畜業者数の推移は次の通りとなっている。

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 注:DS会員以外は、年間1万4百頭以上のと畜業者

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