貿易障壁はより高く、豪州の見解


マーケットアクセスに関する各国の状況を分析

 豪州連邦政府は、先のガット・ウルグアイラウンド(UR)合意に基づき実施さ
れた各国のマーケットアクセスなどに関する分析レポートを発表した。

 これは、 2 月25日、豪州農業資源経済局(ABARE)から発表されたもので、先
のUR合意に基づき実施されたマーケットアクセスに関する各国の改善状況を分析
した上で、世界貿易機関(WTO)体制下での次期農業交渉に向けた課題をまとめ
ている。


UR合意後のマーケットアクセス拡大は限定的との評価

 これによると、94年に締結されたUR合意の実施が農産物貿易に及ぼした効果は、
マーケットアクセスの拡大という観点からは、限定的だったとしている。

 86〜88年を基準期間とし平均36%、最低15%とした関税削減に関する実施基準
を例に取り上げ、外枠のみの約束だったために、削減実行に当たっては、条件を
課したり特別な品目に限定したりと、多様な修正運用を許すことになったとして
いる。また、関税化における関税相当量(TE)の算出においても、各国に有利な
計算が行われた結果、実態を反映しない極端に水増しされた関税の設定を可能に
したとしており、これらの実施基準によって、関税などマーケットアクセスに関
する障壁はUR合意前よりも高くなった例もあるとしている。

 このため、同レポートでは、次期交渉におけるマーケットアクセス拡大をより
確実なものにするためには、約束の実行に当たっての執行手続きまでを体系的に
定める必要があるとしている。また、マーケットアクセス拡大のための突破口と
なる関税割当に関しては、税率や数量と並び、その管理執行手続きも重要な交渉
項目になると結論付けている。


食品の安全性、国家貿易機関などが次期交渉の争点に

 これらの基本的な問題に加え、次期貿易交渉では、食品の安全性、国家貿易機
関、遺伝子組み換え農産物(GMOs)、労働や環境に関する基準などが、マーケッ
トアクセス拡大に当たって重要な争点になると指摘している。

 特に、急速に普及するGMOsに関しては、既に議論となっている輸入国側の受
け入れ規制のほかに、種(Seed)の部分の所有権が既に一部の多国籍企業によっ
て登録管理されていることから、価格や販売品目が国や地域に応じて恣意的に操
作された場合には輸出価格に跳ね返り、国際的な不公平が生じるとの懸念を示し
ている。また、労働と環境に関する基準は、規制強化が生産コストの上昇をもた
らしたり、非関税障壁として悪用される可能性もあるとし、マーケットアクセス
拡大に少なからぬ影響を及ぼすとみている。


検疫を理由にした輸入制限に対する調整が課題

 奇しくも、今回のレポートが公表された同じ週に、検疫を理由にした豪州の鮭
輸入制限に関してカナダがWTOに提訴していた問題に対し、今年 7 月までに豪州
に改善措置を求める裁定が下された。本レポートは、農産物貿易自由化の積極派
として次期交渉に向けたけん制ともみられるが、一部品目の「検疫を理由とした
豪州の輸入制限は非関税障壁」との輸出国からの非難もあり、次期交渉までにど
のような形で調整を図るのか注目される。

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