豪州、食肉パッカーが相次いで工場閉鎖・縮小


競争激化により大手パッカーの工場が閉鎖

 豪州ニューサウスウェールズ(NSW)州では、99年 2 月以来、経営悪化に伴う
大手食肉パッカーの工場閉鎖や縮小が相次ぎ、関係者に衝撃を与えている。

 同州中西部ブレイニー所在の大手食肉パッカー(ニュージーランド資本)は、
3月上旬、採算悪化を理由として工場を無期限に閉鎖する旨を発表し、同月第2
週目から操業を停止している。


地元経済に大きな影響

 同工場は、96年にニュージーランド最大の食肉パッカーが取得して以来、設備
投資などを行い経営の再建を図ってきたが、昨年から再び採算が悪化し、閉鎖、
再開を繰り返した末、今回無期限閉鎖の決定を余儀なくされるに至った。

 工場は320名のフルタイム労働者と100名のパートタイマーを雇用し、産業の乏
しい地域経済の中心を担っていただけに、今回の無期限閉鎖の決定は周辺の肉牛
生産者のみならず、地域全体に大きな動揺を与えている。


過剰なと畜能力や非効率な労働慣行などにより経営悪化

 工場責任者のコメントによると、閉鎖を決定した最大の理由は、と畜施設の過
剰によるパッカー間の過当競争が、この先も当分続くと判断されたためとしてい
る。また、旧来の非効率な労働慣行が残る豪州では、労働コストがニュージーラ
ンドに比べて極めて高いことも理由として掲げ、今後は生産の拠点を本国へ移す
ことも示唆した。

 豪州では、過去における意欲的な投資や設備拡充によって、食肉業界全体のと
畜処理能力が肉牛供給に比して過剰となっており、多くの食肉処理施設の老朽化
が進む一方で、新たな設備投資を行うには採算のめどが立たないという構造的な
問題が生じている。

 また、従来から指摘されている非効率な労働慣行は、豪州政府がその改革に意
欲的に取り組んでいるにもかかわらず、依然として残されており、工場経営上の
大きな問題となっている。

 さらに、昨年以降、干ばつの終息に伴って生産者の肉牛保留意欲が高まり、国
内肉牛価格が高水準で推移している一方、日本をはじめとする輸出相手国の不況
によって輸出価格は低迷しており、パッカーの経営環境は極めて厳しいものとな
っている。


例年に増し厳しい経営状況

 既に、 2 月にはNSW州東北部カシノの大手パッカーが、同じく採算悪化を理
由に工場を閉鎖したため650人の雇用機会が失われたほか、3月には同州南西部ガ
ンダガイのパッカーが羊肉と畜部門を半分に縮小するなど、食肉工場の閉鎖や縮
小に関する一連の動きが報道されている。

 例年、豪州の秋口に当たるこの時期はパッカーの閉鎖や整理が話題となるが、
今年は例年に増して状況が厳しいと言われている。また、パッカーの経営悪化の
根拠に挙げられている諸要因が、いずれも根の深いものであり、早急に解決され
る性格のものではないため、こうした厳しい状況は当分の間続くものとみられて
いる。

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