全人代、農業の安定・強化をてこに経済回復図る(中国)


経済減速の打開策、十分に示されず

 中国の国会に相当する全国人民代表大会(全人代)が3月 5 日〜15日、北京で
開催された。

 本年、中国は建国50周年を迎えることから、通年の政策が決定される今回の全
人代には大いに注目が集まっていた。私的所有制の発展がうたわれるなど 6 年ぶ
りの憲法改正が行われたのに加え、朱鎔基首相は積極的な財政投資による内需拡
大を経済発展の大きな柱として、農業の安定・強化、国有企業改革の促進、輸出
の増大、金融改革の推進を経済運営の重点策とした。しかし、経済の減速が顕著
化する中で、十分な打開策を打ち出せなかったとする声が強い。


内需拡大には農村経済の発展が不可欠

 今回の全人代では、経済問題に最大の焦点が当てられたため、従来からの優先
的政策である農業振興についてはあまり多くは語られていない。しかし、内需拡
大の大きな担い手として、人口の7割以上を占める農村部の経済の安定的な発展
が重要とされた。具体的には、農村市場の開拓に努め、食糧流通改革の深化、農
産物物流の発展、農民負担の軽減・所得の向上などを図るとしている。

 国家発展計画委員会は99年国民経済と社会発展計画草案の中で、本年の食糧生
産目標(穀物、マメ類、イモ類の合計生産目標)について、昨年並みの4億9千
5百万トンを維持するとしている。


経済に積年のひずみ、朱首相の手腕に注目

 中国では現在、多数の工業業種における積年の生産過剰、一部の国有企業の経
営難、アジア金融危機による輸出の減速(99年 1 〜 2 月は前年同期比10.5%減)
などの経済問題が表面化しつつある。

 こうした中、今回の全人代では99年のマクロ経済の指標として、 7 %の経済成
長を予想している。従来中国は、計画経済の象徴として経済成長の「目標値」を
掲げてきたが、今回から新たに「予想値」とされたことは、昨年、8%を「目標」
にしたものの、景気後退により達成できなかったこと(実績7.8%)によるものと
考えられる。「 7 %」は、農村における余剰労働力を含めると失業率が10%以上
と言われる現在の中国にとって、雇用を確保する上などから最低限必要な成長率
とされている。

 幾多の問題の深刻さを認識することから始まった99年の経済運営であるが、今
後、かじ取り役の朱首相の手腕が注目される。

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