低所得者層の入学児童に無償牛乳(フィリピン)


既存の学校牛乳供給事業と別に牛乳の無償供給を開始

 近年、フィリピンの経済は順調に拡大し、97年には、 1 人当たりの国内総生産
(GDP)が1,132ドルとなったが、依然としてその水準は低く、マレーシアの4分
の1、インドネシアと同程度の水準であった。また、97年の通貨危機による経済
の停滞は、貧富の差をますます拡大させ貧困層を増加させていると言われており、
この影響を受けた児童・生徒の栄養不良は深刻な社会問題となっている。

 このため、フィリピン教育文化スポーツ省(DECS)は、従来から実施されてい
る学校牛乳供給事業(SMP)とは別に、低所得者が居住する地域から公立小学校
に入学する児童約 2 万 9 千人を対象に、 6 ヵ月間牛乳を無償で供給することを
発表した。予算額は2,830万ペソ(約9,100万円:1ペソ=約3.2円)で、そのうち
1,390万ペソは、牛乳を購入する費用に充てられ、残りは運営経費などに充てられ
る。

 無償供給の対象となる児童は、月曜日から金曜日までの毎日、休み時間に1パ
ックの牛乳を与えられるが、飲用開始に当たって、事前に身長、体重などの体位
の測定および健康診断、歯の検査、回虫駆除が行われる。

  6 ヵ月後には、その効果を測定するため、児童は再度検査を受けることとなる
が、この検査結果は、今後における児童・生徒の栄養改善などの指針に活用され
る。


学乳事業で児童・生徒の健康状態の改善を狙う

 同国におけるSMPは、貧困のために栄養不良となっている児童・生徒の健康状
態の改善および国産生乳の競争力の確保などを目的として、国立酪農庁(NDA)
などにより実施されている。また、SMPとは別に、独自に予算を計上して、学校
牛乳の供給を実施している市町村もある。

 SMPの実施状況については、98年が723万ペソ(約2,300万円)の予算額で、73
市町村において約780校、約4万 7 千人が飲用した。また、99年は、1,307万ペソ
(約4,200万円)の予算で、 8 地域の18県において、98年に比べ150校、1 万人の
増加を目標として実施している。なお、対象児童は、予算の制約から小学1 年生
とし、 1 日当たり200cc、週 5 日、120日間牛乳を無償で供給する。


国内消費の大部分を輸入に依存

 NDAが公表した98年の生乳生産量(速報)は、乳用経産牛の減少により前年
比9.6%減の924万リットルと国内消費量と比較してわずかなため、国内消費量の
かなりの部分は、バター、粉乳などの乳製品の形で豪州などから輸入されている。
なお、 1 人当たりの牛乳の年間消費量(95年)は、脱脂粉乳にバターを混ぜた
安価な加工乳または還元乳などが主流であるため、21.1kgと生乳生産量に比べる
と高水準となっている。

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