生体豚の輸入を全面禁止に(シンガポール)


マレーシアおよびインドネシアからの生体豚の輸入を全面禁止

 シンガポール政府は、 3 月19日、マレーシアでまん延する日本脳炎および新種
ウィルスによる疾病の対策として、これまで地域を限定して禁止していたマレー
シアおよびインドネシアからの生体豚の輸入を、全面的に禁止した。また、マレ
ーシアとシンガポールとの間で交互に開催している競馬についても、当分の間シ
ンガポールでの開催を中止し、マレーシアからの競走馬の輸入を禁止するほか、
犬や猫など、鳥を除く生きた動物すべての輸入を禁止すると発表した。

 シンガポールでは、国内に 2 ヵ所あると畜場の職員や、それらのと畜場を利用
する卸売業者など数名が、日本脳炎と疑われる症状などを呈しており、うち 1 名
が死亡する事態が発生したためである。政府はこのと畜場の職員 2 名の発病が確
認された 3 月18日からこのと畜場を閉鎖したが、もう1カ所あると畜場について
も、死亡者の出た翌19日に閉鎖をしており、事実上、生体での輸入は出来ない状
況となっていた。同国政府によると、この輸入禁止とと畜場の閉鎖措置は、マレ
ーシアでの状況が改善されるまで継続することとしている。


豪州からの輸入で供給不足を賄う

 シンガポール政府は 3 月初旬から、ウィルス性の脳炎が発生しているマレーシ
アのペラ州とヌグリ・スンビラン州の農場からの豚の輸入を禁止する一方、輸入
される豚に生産農場の入れ墨を行うことの徹底を図っていた。また、国内 2 ヵ所
のと畜場職員約550名に対して、日本脳炎のワクチン接種を行い、この病気の伝染
を防ぐ措置を講じてきた。

 シンガポールはその狭い国土のため、環境問題に配慮して養豚業を90年に全面
禁止しており、同国で消費される豚肉のすべてを輸入に頼っている。97年に輸入
された豚肉は、部分肉換算で約 5 万 2 千トンであるが、同国では中華系住民の割
合が国民の約 8 割を占めていることなどから、生鮮豚肉への需要が強く、マレー
シアからの生体豚によるものが約 4 万7千トン(104万頭)と、輸入量全体の90%
を占めている。このため、スーパーマーケットの店頭から一時豚肉がなくなるな
ど、供給不足が懸念されている。同国政府は、マレーシアでの新種ウィルスなど
が原因とされる脳炎のまん延により、既に豚肉の消費量が40%以上減少している
ことから、当面は豪州などからの輸入豚肉によって、需要は賄えるとの見方をし
ている。


タイ養豚産業、シンガポール市場への参入を図る

 一方、タイの養豚業界では、これまで価格競争力が弱くシンガポール市場に参
入できなかったものの、同市場への最大供給源であったマレーシアからの輸出が
当面なくなったことで、米国や豪州などと競合しない生鮮豚肉の輸出市場として
の期待が高まっている。しかし、両国間には口蹄疫などの動物検疫上の問題が多
く残っており、タイ産生鮮豚肉の輸入には、まだ時間がかかるとの見方が強いよ
うである。

 なお、日本では、マレーシア、インドネシアおよびタイからの生体豚、豚肉な
どの輸入は認められていない。

元のページに戻る