畜産経営体に対する水質保全対策の最終規則が公表される(米国)


水質保全アクション・プランに基づき、畜産経営体への環境規制を強化

 クリントン大統領は98年 2 月、米国の水質の回復と保護を図るための青写真と
も言うべき、水質保全アクション・プラン(Clean Water Action Plan)を公表した。
同アクション・プランに基づき、畜産経営体(畜舎などの囲いを設けて家畜を管
理している畜産経営体)による水質および公衆衛生への影響を最小限にするため、
米農務省(USDA)と米環境保護庁(EPA)は、共同で全国戦略の策定を進めてい
た。

 まず、USDAとEPAは98年 9 月、「畜産経営体のための全国戦略」の草案を公表
(詳細は本紙98年11月号北米トピックス参照)するとともに、その後120日間、同
草案に対する一般からのコメントを受け付けた。また、同草案について幅広い討
議を行うため、全国11カ所において公聴会を開催した。

 以上のような手続きと一般からの1,800に及ぶコメントを踏まえ、USDAとEPAは
 3 月 9 日、「畜産経営体のための統一全国戦略」最終規則を公表した。


最終規則の骨子は、昨年発表された草案を継承

 現在、米国には45万の畜産経営体があり、年間13億 7 千万トンのふん尿が発生
していると推定される。このうち、水質に危害を及ぼす可能性の高い大規模畜産
経営体(1,000家畜単位以上。300〜1,000家畜単位でも水質保全上問題のある経営
体を含む。)は約 2 万あり、これらの経営体は水質保全法(Clean Water Act)に
基づく排水管理に係る許可が必要とされている。しかし、実際には、その10分の
1に当たる約 2 千の経営体が許可を取得しているにすぎない。

 今回公表された最終規則では、全体の5%に当たるこれら約2万の畜産経営体が、
水質保全法に基づく許可を取得するとともに、残りの95%の経営体は、家畜ふん
尿などの自主的な管理計画の策定が求められており、多くの点で草案がそのまま
生かされている。

 他方、草案からの主な修正点は、@自主的な計画の最終策定期限について、1
年間延期し2009年に変更したこと、A畜産経営のインテグレーションを行ってい
る企業に対して、共同責任を負わせることとしたこと、B州政府に対して多くの
裁量を委譲したことなどである。


米政府は、EQIP事業の予算拡大などによりこの対策を支援

 このような対策を支援するため、ゴア副大統領は議会に対して、20年度の環境
改善奨励事業(EQIP)予算について、1億ドル(約121億円: 1 ドル=121円で換
算)増額するよう要請した。また、州政府による流域復興行動戦略(Water Resto
ration Action Strategies)対して、1億ドル(約121億円)を追加支給すると発表
した。さらに、20年度予算では、州政府による水質保全のための融資事業に対し
て、1億5千7百万ドル(約190億円)の予算が提案されており、このうち、20
%は補助金として活用することができるとしている。

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