EUの牛肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○イギリス、畜産農家の経営悪化を受けて追加対策を発表


牛肉や羊肉の市況低迷により畜産農家の経営がさらに悪化

 イギリスでは、牛海綿状脳症(BSE)問題発生後の長引く成牛価格の低迷に加
え、羊などの市況も悪化していることなどから、畜産農家の経営悪化が深刻化し
ている。99年上半期のイギリスの成牛価格(市場参考価格:指定市場における成
牛取引価格を加重平均したもの)は、89.6ポンド(約1万6千円:12ポンド=180
円)/100kgとBSE問題発生直前の95年の8割以下に落ち込んでいる。羊の価格も
羊皮価格急落の影響を受けて、98年以降EU全域で低迷が続いている。

◇図:成牛および羊の市場参考価格◇


農業団体が畜産農家の窮状を政府に訴える

 イギリスの農業団体の1つである全国農業者組合(NFU)は、丘陵地域の農家の
99年の農業所得が、既に低い水準にあった昨年をさらに30%程度下回り、実質的
に過去最低水準の1戸当たり平均5千3百ポンド(約95万円)になるものと推定し
ている。丘陵地域の農家の多くは畜産に従事しているが、その農業所得は、この
2年間で実に3分の1に激減したことになる。NFUはイギリス政府にこの問題に対す
る対策を講じるよう強く求めていた。


イギリス政府、追加農家対策を発表

 こうした厳しい状況を受けて、イギリスのブラウン農相は9月20日、1億5千万
ポンド(270億円)に上る追加農家対策を発表した。 昨年秋にも農家支援策が実
施されており、今回の追加対策は、依然厳しい畜産農家の状況を考慮した例外的
な特別対策であるとしている。その概要は以下の通り。

@丘陵地畜産補償手当(HLCA)の増額

 条件不利地域への補償政策の1つであるHLCAについて、今後も昨年度同様6千
万ポンド(108億円)の増額を行う。ただし、来年度以降については、99年3月に
合意された共通農業政策(CAP)改革の実施に伴い策定される地方開発規則によ
る。

ABSEに関する監視費用などの徴収延期

 枝肉などからBSEの感染源となる可能性の高い特定危険部位(SRM)が確実に除
去されたかの検査に要する費用については、来年度から徴収する予定であったが、
これを2002年3月まで2年間延期する(4千4百万ポンド:80億円)。また、牛の個
体識別のためのパスポートに要する経費(1頭当たり7ポンド(1,260円))につい
ては、99年10月から徴収予定であったが、同様に2002年3月まで延期する(4千5
百万ポンド:81億円)。最近の沈滞した市場情勢から見て、これらの費用は当面
国民負担とするのが妥当。

Bマーケティングの強化

 農家のマーケティングや競争力の改善を支援(1百万ポンド:1億8千万円)

 今回の追加農家対策に対して、農業団体は、一部の対策は歓迎できるものの、
最近の畜産物市況低迷には十分でないと厳しい評価をしている。


通貨レート調整のための補償金も交付

 また、99年1月から欧州の統一通貨としてユーロが導入されたが、通貨統合に
参加しなかったイギリスなどついて、通貨レートによる格差を調整するための
補償が既に認められている。今回の発表に併せ、6千2百ポンド(112億円)が、
11月から雄牛特別奨励金(BSP)および繁殖雌牛奨励金(SCP)の上乗せ分とし
て、畜産農家へ交付されることなどが公表された。

 なお、9月17日のEU羊肉管理委員会で、イギリスなどが申請していた子羊肉
(ラム)民間在庫補助が認められた。

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