EUの牛乳・乳製品の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○脱脂粉乳の域内価格に回復の兆し


9月の域内価格は前年を6.2%上回る

 低迷が続いていたEUの脱脂粉乳域内価格に回復の兆しが見られる。指標価格の
1つであるドイツの工場渡し価格は、98年10月以降、3.75マルク(約218円:1マル
ク=58円)/kg前後で低迷していたが、99年6月にわずかではあるが上昇の兆しを
見せた。その後も価格上昇が続き、9月には、前年同月比6.2%高の4.11マルク(2
38円)/kgとなり、21ヵ月ぶりに前年を上回った。価格上昇が始まる直前の99年
5月と比較すると、わずか4ヵ月で9.6%上昇したことになる(左図参照)。


生産の減少と飼料向け需要の増加が要因

 生産の状況を見ると、EU(12ヵ国)の99年上半期(1〜6月)の脱脂粉乳生産量
は、前年同期比5.5%増の63万6千トンとなり、依然高い水準にある。しかし、月
別にその動きを見ると、99年始めに生産増加が顕著に見られたものの、5月以降
は一転して前年を下回って推移している。この背景としては、@EUにおいても暑
い夏となったため、生乳生産が伸び悩んだとみられること、Aロシア向けのチー
ズ輸出が、98年8月の通貨ルーブルの切り下げ前の水準には届かないものの、回
復傾向にあるため、生乳のチーズ仕向けが前年並みの水準に戻ってきていること
が挙げられる。これらに加え、B近年、ヨーグルトやデザート類などの域内消費
が順調に拡大していることも背景となっている。  

 また、5月をピークとして、その後、脱脂粉乳生産が減少していく時期に入っ
たことも、価格回復に影響を与えているとみられる(左図参照)。

 脱脂粉乳の需要面を見ると、EUにおいては、脱脂粉乳の域内消費の2分の1以上
を飼料向けが占めているが、99年1月〜4月までに飼料向け脱脂粉乳の消費量は前
年に比べ1割以上増加した。飼料向けの増加は、低価格を背景としており、特に
子牛早期出荷奨励事業の終了で飼料向け需要が増加しているとみられる。

◇図:脱脂粉乳生産量の月別増減率◇


9月末の介入在庫数量は、前年同月比25.1%増

 脱脂粉乳の介入買い入れは、脱脂粉乳の生産が増加する3月から8月まで実施さ
れ、本年については既に終了した。9月末の脱脂粉乳の介入在庫量は、前年同月
比25.1%増の25万4千トンと高い水準となっているものの、8月末からは飼料向け
への放出などにより2万トン以上減少した。最近の価格の回復基調を受けて、EU
の乳製品管理委員会は9月30日、96年10月1日以前に介入在庫として保管された脱
脂粉乳について飼料向けに放出することを決定している。

◇図:脱脂粉乳の介入在庫量◇

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