◇絵でみる需給動向◇
台湾の全国22ヵ所の肉豚卸売市場における豚の取引価格は、年末需要や2月中 旬の春節(旧正月)に向けての需要増加などを背景に、98年末から高水準で推移 した。99年3月に入ると、需要の盛り上がりが一段落し、豚価は一度下落したが、 豚肉の供給不足などから、下げ幅はそれほど大きくはなかった。 その後、4月下旬になると、肉豚卸売価格は再び上昇を始めた。そして6月以降 は、生体100kg当たり6千元台後半〜7千元台(1元=約3.41円)の高値で安定し、 さらに8月に入って、台北縣市場では8千元にまで迫る勢いを見せた。 こうした豚価上昇の背景には、@6月18日の端午節(旧暦5月5日:台湾では、 端午節に豚肉を使ったちまきを多く食べる習慣がある)に向けた需要増加、A口 蹄疫発生後の政府による養豚農家の離農促進や、繁殖母豚・子豚のとう汰等の影 響、B7月以降天候が不安定で、雷雨により午後から気温が下がり、豚肉消費が 刺激されたことなどがあるといわれている。
豚の生産不足や、8月25日の中元節(旧暦7月15日:日本のうら盆に相当)に向 けての豚肉需要の増加などから、肉豚卸売価格は8月前半まで7千元台を保ってい た。だが、豚価は8月半ばを境に下落し始め、同月下旬には6千元台、さらに9月 に入ると5千元台となり、昨年12月初旬の水準まで落ち込んだ。 台湾における豚の飼養頭数は、97年3月の口蹄疫発生以来、減少の一途をたど っていたが、99年5月末の調査では679万3千頭、前回調査(98年11月)に比べ3.9 増%と、口蹄疫発生後初めて増加に転じた。これは、高値で安定する豚価に反応 し、比較的規模の大きい養豚農家が、規模拡大によりさらなる利潤の追求を図ろ うとしたためであると考えられている。 台湾では、98年2月に合意した米国との2国間交渉に係る米国産豚肉の輸入に続 き、今年7月1日からは、米国以外の国々に対しても、一定の限度数量内で豚肉市 場が開放されている。このため政府は、豚価が高水準を保つのは一時的であり、 事実上輸出市場を持たない現在の台湾で、短期的な豚価の高騰により競って規模 を拡大することは供給過剰を招くと警告していた。それにもかかわらず、今後の 肉豚の供給可能頭数は、今年7〜8月が151万頭、9〜10月が153万頭、11〜12月が 155万頭と次第に増加する見込みで、政府は、供給過剰による豚価の暴落を招く ことのないよう、養豚農家に対し改めて警告している。 ◇図:肉豚卸売価格の推移◇
9月21日午前1時47分(日本時間:同日午前2時47分)、台湾中部を震源地とす るマグニチュード7.7の大地震が発生した。この地震は各地に大きな被害をもた らし、断続的に発生する余震は、その被害を増大させている。行政院農業委員会 (農業省に相当)は、地震発生当日、緊急対策チームを発足させ、震災に対応し ている。畜産関係に対しては、停電期間中は自家発電機の利用などにより、畜舎 を平常な状態に保つとともに、給水や通気に配慮すること、防疫体制を強化する とともに、死亡獣畜については的確に処理し、感染症の流行を招かないよう注意 することなどが指示された。 農業委員会の発表によると、9月23日午後5時(日本時間:同日午後6時)現在、 畜舎の全壊は約32万2千平方メートル、半壊は約4万平方メートルで、死亡した家 畜は、牛10頭、豚214頭、羊400頭、同じく家きんは、鶏69万1千羽、ガチョウと カモが1千羽ずつとなっている。これらの被害合計は、5億9千6百万元(約20億3 千万円)余りに上るとされる。 また、地震の発生当日まで下落を続けた肉豚卸売価格は、その直後に急騰し、 台北縣市場などいくつかの市場では、9月22日から23日のわずか1日の間に、1千 元前後も上昇するところも見られた。だが、豚価の高騰は一時的なもので、その 後は再び下落の傾向を見せている。 震源地に近く、地震の被害が大きかった台中縣および南投縣には、今年5月末 の調査で、それぞれ522戸(全国比3.3%)および204戸(1.3%)、の養豚農家が あり、21万1千頭(3.1%)および12万9千頭(1.9%)の豚が飼養されている。い ずれも、全国に占める割合はそれほど大きくはないが、地震の被害は中部だけで なく台湾の広範にわたっており、今後の台湾の養豚や豚肉供給などに与える影響 が懸念される。
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