◇絵でみる需給動向◇
米農務省(USDA)は先頃、99年9月1日現在の豚の飼養動向を発表した。これ によると、豚の総飼養頭数は、9月としては史上最高を記録した前年同期を4.3% 下回る6,074万頭となった。また、州別では、全米第1位のアイオワ州で前年水準 を維持したものの、他の上位4州はいずれも前年を下回った。 豚の飼養頭数(99年9月1日現在) 資料:NASS/USDA「Hogs and Pigs」 注:肥育用、繁殖用ともに雄雌を含む ◇図:州別豚飼養頭数シェア◇
中でも、繁殖豚頭数は、前年同期比8.5%減の629万頭と、飼料コストの高騰に 伴う生産意欲の減退などから大きく落ち込んだ96年をさらに下回り、9月時点で の過去最低を更新した。業界関係者は、このような繁殖豚の減少は、昨年秋以来 の肥育豚価格の低迷を契機に廃業または経営を縮小した小規模生産者に起因する と分析している。なお、資本力のある大規模経営は、中小規模経営を吸収して経 営の効率化を図っていることから、繁殖豚を増やさないまでも現状を維持してい るとみられる。 ◇図:豚飼養頭数の推移◇
このように繁殖基盤を維持している経営は、今秋から冬にかけて、採算が合わ ないまでも多少とも値上がりが見込めれば生産を拡大するとみられる。こうした ことなどから、今後の肥育豚価格は、短期的には回復が見込めず、99年平均では 72年以降最低となった前年をさらに下回る30ドル/100ポンド(71円/kg:1ドル =108円)まで低下するとみる専門家が多い。USDAでは、今年第4四半期の肥育 豚価格(主産地であるアイオワ州およびミネソタ州の平均価格)は、28〜30ドル /100ポンド(67〜71円/kg)、99年平均では32〜33ドル/100ポンド(76〜79円 /kg)と見込んでいる。
一方、9月中旬に東海岸を襲った台風(ハリケーン・フロイド)は、ノースカ ロライナ州に最も大きな打撃を与えた。特に被害の大きかった同州東部には養豚 経営が集中しているため、同州政府は、今回のハリケーンにより2万8千頭の豚が 死亡したとしている(10月1日現在)。これは同州の年間生産頭数の0.3%にすぎ ないことから、需給に与える影響は小さいとみられている。むしろ、業界の間で は、全国ネットのテレビ局によるハリケーンの被害報道の際、洪水で流される家 畜や決壊したラグーン(ふん尿貯留池)を放映したことから、全米でも厳しいと される同州の環境規制に対する影響が懸念されている。
元のページに戻る